【ナッシュビル(米テネシー州)6日(日本時間7日)=四竈衛、佐藤直子通信員、水次祥子】マリナーズからFA(フリーエージェント)になっていた岩隈久志投手(34)が、ドジャースと大筋で合意したことが明らかになった。3年契約で4500万ドル(約54億円)の内容が見込まれ、近く正式発表される見込みだ。

 「メジャーで最も過小評価されている投手の1人」ともいわれた岩隈が、ようやく実力に見合う評価を手にした。条件は平均年俸1500万ドル(約18億円)の3年契約とみられる。来季35歳を迎えるベテランにとっては破格とも言える条件で合意した。11年オフに楽天時代よりも低い年俸150万ドルでマリナーズと契約し、大リーグのキャリアのスタートは中継ぎだった。そこから地道に信頼を積み上げ4年間で47勝をマーク。マ軍入団時の10倍の年俸で名門ドジャースと大型契約を結ぶまでになった。

 今季は4月に右広背筋を痛めながらも20試合で9勝5敗、防御率3・54。メジャー日本人投手2人目となるノーヒットノーランの快挙も達成した。FAとなったオフに古巣マリナーズが提示した1年1580万ドル(約19億円)のクオリファイングオファーを拒否すると、マ軍を含む複数球団による争奪戦に発展した。

 10月に就任したばかりのマ軍ディポトGMは「岩隈との再契約が最優先」と唱え続けたが、願いはかなわなかった。シアトルに愛着を持つ岩隈の心が残留へと傾く中、ドジャースのザイディGMが積極的に動いた。同GMは、岩隈がポスティングにかけられた10年オフ、1910万ドルで独占交渉権を獲得したアスレチックスでデータ分析の専門家として補強に関わっていた。当時は契約合意に至らなかったが、5年たっても高い評価は変わらなかった。

 ド軍先発ローテはカーショーに加え、アンダーソン、柳ら左腕が多く、右腕の補強が急務だった。グリンキーとの再契約に失敗すると、すぐさま方向転換。以前からリストアップしていた岩隈に対し、マ軍の2年を上回る3年契約を用意した。岩隈は最後の最後まで頭を悩ませた結果、新天地で新たな1歩を踏み出す決意をしたようだ。

 野茂英雄からはじまり石井、斎藤、黒田と受け継いだド軍日本人投手の系譜を、来季から岩隈が受け継ぐ。