よりを戻してマリナーズ愛が深まった。FAになっていた岩隈久志投手(34)が18日(日本時間19日)、マ軍と再契約し、本拠地シアトルで記者会見を行った。1度はドジャースと3年4500万ドル(約54億円)で大筋合意した大型契約が身体検査後に破談となり、その後、再び熱烈ラブコールを受けて古巣残留を決断した。1年契約でも、3年連続190投球回をクリアすれば総額4750万ドル(約57億円)に達する。満額パフォーマンスで期待に応える。

 わだかまりは消え、会見に臨んだ岩隈は晴れやかな表情で、両軍との交渉経緯を説明した。「ドジャース球団と再交渉ということになり、その時、真っ先にマリナーズが連絡をくれた。やっぱり必要とされる球団でプレーしたいという思いがあった。その喜びしかないです」。14日までにロサンゼルス市内の病院で身体検査を受けた結果を、ド軍側が憂慮。提示していた条件の見直しを含め、白紙=再交渉となったことで状況は変わった。1度はフラれても、両者の怪しい雲行きを察知したマ軍はすぐさま、猛アプローチを再開。岩隈の心を揺さぶり、残留の返答を勝ち取った。

 今季開幕を故障者リストで迎えたものの、岩隈は体調を問題視するド軍の声には抵抗感を隠しきれなかった。後半戦は安定した成績を残し、8月12日のオリオールズ戦ではノーヒットノーランを達成。今現在も「めちゃくちゃ元気です。健康なまま、シーズンを終えることができましたし、今もトレーニングを続けて問題ない」と断言するほど、不安はない。ド軍との交渉破談については「話し合いの中でそうなっただけ」と話すにとどめ、引きずらなかった。

 01年以来のプレーオフ出場が悲願のマ軍は、「今オフの最優先事項」と位置付けた最高の戦力を引き留めることができた。岩隈は「このシアトルで戦う使命があるなと感じることができた」と、地元への愛着を口にした。現時点で保証される金銭条件は1年1200万ドルだけでも、働き次第で約4倍にはね上がる。さらに、来季から新たに同学年の青木が加入する。「ノリと一緒にプレーできることはうれしい。すごく楽しみです」。紆余(うよ)曲折あっても、4年間在籍したマ軍への愛情は格別。古巣残留に落ち着き、笑みが絶えなかった岩隈の口調は、最後まで軽やかだった。

 ◆190回以上投げた日本人投手 大リーグで1シーズンに190回以上を投げた日本人投手は野茂、大家、松坂、黒田、ダルビッシュ、岩隈の6人で、のべ18度。3年連続以上は野茂(4年連続)黒田(5年連続)の2人。岩隈の渡米後は13年(219回2/3)の1度だが、日本時代には3度ある。