<オリオールズ2-3エンゼルス>◇29日(日本時間30日)◇オリオールパーク

 【ボルティモア(米メリーランド州)=小島信行】オリオールズ上原浩治投手(34)がエンゼルス戦に先発し、痛烈な投手ライナーを受けて降板した。打球はみぞおちを直撃し、幸い次回の先発(5月5日レイズ戦)には影響ないが、少しでも横にずれ、肋骨(ろっこつ)や胸骨に当たっていたら骨折は免れなかった。6回1/3を投げて3失点と好投したが、チームは2-3で敗れ2敗目(2勝)を喫した。

 破裂音のように響いた打球音。体のど真ん中を目掛けて向かってくる打球に、上原は全く反応できなかった。7回1死、マシューズの痛烈な打球はみぞおちに当たってはね返り、一塁へ転がった。ヨロヨロとボールを追うが、呼吸ができない。崩れるヒザと両手をつき、そのまま動けなくなった。トレーナーが驚いてベンチを飛び出し、チームメートも上原の周りに集まって心配そうに見守った。1分後、何とか立ち上がると、トレーナーの肩を借りてベンチへ引き揚げた。正真正銘の“KO負け”を食らった瞬間だった。

 フィールディングには定評がある上原が何もできなかった。「打球がバレーボールぐらいの大きさに感じた。息ができなかった。少し落ち着いて、ゆっくり呼吸して大丈夫になったけど」と球場内にあるエックス線室で患部を撮影。骨には異常がなく、試合後は平然としていたが「どっちか横にずれて骨に当たっていたら、折れていたでしょうね。危なかったです。次回?

 問題ないし、明日も普通にしています」と今後の登板に支障がないことを明言した。

 KOシーンが衝撃的だったのも、それだけ投球の内容が良かったから。1点をリードした4回2死二塁、カウント1-1。5番のモラレスを迎えてプレートに足を乗せたまま、指先を温めるために息を吹きかけた。指をなめての反則投球を取られてボールを宣告され、直後にタイムリーを浴びた。さらに1-1の7回に2本塁打され負け投手にはなった。だが最速91マイル(約146キロ)の直球主体で強気に攻め続けた投球内容は光った。「(ペナルティーは)やばいと思ったら、しっかりと見られていました。ホームランは失投。負けて楽しいとは言えないけど、中身はあったと思います」と納得していた。

 98年にドラフト逆指名会見で巨人入団を宣言したが、最後まで迷っていたのがエンゼルスだった。「10年前の話。当時にいた人はいないし、ボクも変わっていますから」とコメントしたが、全盛期を過ぎた今でも、力のあることを証明した。開幕してまだ1カ月。「まだ140試合ぐらい残っているでしょ。日本なら、今から開幕したって感じなんですね」。あこがれ続けたメジャーで5試合に登板して2勝2敗。強烈な一撃とともにデビュー1カ月を終えた。