<レンジャーズ2-9ヤンキース>◇27日(日本時間28日)◇レンジャーズボールパーク

 【アーリントン(米テキサス州)=大塚仁】ゴジラがついに目覚めた。ヤンキース松井秀喜外野手(34)がレンジャーズ戦で今季初、メジャー3度目の1試合2本塁打を放った。6回に日米通算450号となる6号ソロを放ち、7回には2打席連続となる7号2ラン。快勝に貢献し、レッドソックスと並んで今季初となる首位にチームを押し上げた。

 敵地でのヒーローインタビューを終え、クラブハウスに戻った松井を待っていたのはAロッドとチャンピオンベルトだった。今季からチーム内で始まった「今日のMVP」表彰の儀式はプロレスのチャンピオンベルトを贈ること。松井の2本塁打での快勝直後、前回のヒーローだったAロッドに名誉あるベルトを手渡された。照れながらも「初めてです。次の勝利でどこかに行きますから。まあ防衛すれば話は別ですけど」と笑う。米メディアに囲まれて取材を受ける間もロッカーの棚でベルトが輝いていた。松井にようやく光が差した試合だった。

 鮮やかな2発だった。初対戦の左腕ホランドに最初はタイミングが合わなかったが、2打席凡退する中で徐々に対応。6回無死、3打席目の初球をとらえて右翼席に運んだ。さらに7回無死二塁では、救援右腕マドリガルにフルカウントから7号2ランを浴びせた。「自分のスイングがしっかりできたと思うし、甘い球が来ればああいうこともありますよ」。メジャー3度目、07年7月31日以来となる1試合2本塁打。2打席連続は04年8月6日以来で、左右の投手から1試合で本塁打を打ったのはメジャー初だった。

 節目の2発は日米通算450、451号だった。「特別にはないですよ。まあ増えていけばいいなと思うだけで、合計何本とかいうのは考えてないですから」とサラリと言う。400号を打ったのは05年9月7日。日本では1年で50本塁打を打ったこともある松井が、それから50本塁打を打つのに3年半を要した。巨人時代では少々の故障をものともせずに連続試合出場を続けてきた。だがメジャーで連続試合出場が途切れて以来、首脳陣からも「スマートにやれ」と言われるようになり、我慢を強いられることが増えた。それでもこの日は、試合前の練習で太ももに張りを覚えていたにもかかわらず、何事もなかったかのように試合に出て2発を放った。鉄人とも呼ばれた巨人時代の松井が、わずかに顔をのぞかせた瞬間だった。

 松井の2本塁打もあってチームは快勝し、レッドソックスと並んで今季初の首位に躍り出た。「ヤンキースは去年負けてますから、この時期とはいえ首位に立つということは大事なこと。自分たちができるんだということを、自分たち自身が感じていかなくちゃいけない」。心身ともにたくましさを増した松井が、好調なチームをさらに加速させた。