【ニューヨーク23日(日本時間24日)=大塚仁】ヤンキースのブライアン・キャッシュマンGM(42)が、松井秀喜外野手(35)をはじめとする自チームからFAとなった選手との交渉を優先的に進めると発言した。現時点でいずれの代理人とも接触しておらず、FA市場に参戦するよりも「まず我々の選手と話したい」と残留交渉が先と強調した。ジョニー・デーモン外野手(36)と松井がともに残留する可能性も否定しなかった。

 レッドカーペットを歩くキャッシュマンGMには余裕が漂っていた。マンハッタンの劇場で行われたワールドシリーズ優勝記念DVDの完成披露試写会。そこで見せたオフの補強についての姿勢は、あくまで自分の足元をしっかりと見つめていた。「まだどの代理人とも話はしていない」と現時点でのFA選手との個別交渉を否定。その上で、今後の戦略として「まずわれわれの選手と交渉する。FA市場に飛び込むのはそれからだ」と残留交渉を優先させる方針を示した。

 ヤ軍はスカウトを集結させての編成会議を終え、オーナー側とペイロール(年俸総額)の枠組みについての話し合いをスタートさせたばかり。FA市場はすでに解禁しているが「ペイロールを今話しているところ。それを決めないとFA市場にどうかかわるかも決められない」と、現時点ではノータッチであることを強調した。進行中のトレード話もないとした。新戦力の獲得に向けた動きが鈍い一方で、松井、デーモン、ペティットらの自チームからFAとなった選手の去就が先決と強調した。

 松井については「まだ秀喜とは話していない。いずれ話すだろう。今季の活躍を誇りに思う」と語った。松井とデーモンの両方と再契約する選択肢についても「可能性はある。ペイロール次第だろう」と否定しなかった。これまで「松井に外野手としてのチャンスはない」などと突き放す発言が多かったが、編成会議を終えた後のこの日はニュアンスが変わってきた。

 今オフのFA市場には超大物と呼べる選手がいないだけに、総年俸を抑える必要からもFA市場に消極的な態度を取る方針が固まった可能性もある。今季の最終的な総年俸2億1400万ドル(約192億6000万円)から2億ドル(約180億円)以内まで、約13億円以上の削減ともいわれる。同GMとともにイベントに参加したジラルディ監督は「どの選手にも残って欲しい」と世界一メンバーの残留を望む声を上げた。ヤ軍にとって松井は「後回し」の存在ではなくなってきた。