この勝利に、権藤博(日刊スポーツ評論家)の顔を思い出していた。言うまでもない「権藤、権藤、雨、権藤」のレジェンドだ。前カードの中日戦が行われたバンテリンドームで久しぶりにお目にかかったのが理由ではない。以前によく聞いた“投手起用の鉄則”を思い出したからだ。
指揮官・岡田彰布は先発ビーズリーをすっぱりと5回で降ろした。そこまで5回2安打無失点とほぼ完璧な投球。さらに5回裏に打順が回ったのは1死一塁の場面だった。
少し野球を知っている人なら、ひょっとして、こう思ったかもしれない。リードは1点だけ。ビーズリーに犠打で送らせ、上位に回せばいいのでは。しかし岡田はビーズリーとともに1軍昇格した代打ミエセスを送った。だが併殺で、この回、無得点に終わる。
それならバントさせておけば…。だが権藤なら、こう言ったに違いない。「それでいいんだ」。それは、こういうことだ。
今季初先発など気負う場面で投げる投手には想像以上に負担がかかっている場合が多い。それがうまく5回まで投げ、勝利投手の権利を得たとする。そんなときベンチは「もう1イニング、いってもらおうか」などと“色気”を出すことが多い。だが、そういうときに限って6回に崩れるケースが多いというのだ。
98年に監督として横浜(当時)を日本一に導いた権藤は、長年の経験からそんな話をしたものだ。実際、来日2年目のビーズリーに犠打の記録はないし、バタバタして6回に突入してもどうなっていたか。そこをピシャッと代えた岡田も、やはり日本一監督なのだと思わせる。
もっとも岡田はそういうしゃれたことはあまり言わない。交代の理由を聞かれると、もっとシンプルに答えた。「バテとったみたいやし。初回から飛ばしとったからな。今年初先発やし、それはしょうがない、そうもう気合も入っとったし」。限界とみて、決断を下したのである。
もちろん、それは強いブルペンがあるからこそ。“病み上がり”3連投で6回に投げた桐敷拓馬が平然と3人で抑えれば、石井大智、ゲラ、そして岩崎優と結果として全員が3人で1イニングを終えた。もっと打ち勝つ野球も見たいが、これが岡田阪神の基本スタイルだ。今季4度目の「1-0」勝利で1点差試合は11勝3敗。シブい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)







