マリナーズ・イチロー外野手(36)が23日、天才ならではの調整論を明かした。神戸市内のスカイマークスタジアムで、旧知の日本ハム坪井との合同自主トレをスタート。国内で調整を続け、1カ月後の2月23日(日本時間同24日未明)にキャンプインするが、開幕まで逆算。キャンプ直前の時期には「スイッチを抜く。それで優越感を感じたい」と独自の考えを披露した。前人未到の記録更新、10年連続シーズン200安打がかかる今季へ「イチ流」の自然体で突入する。

 大好きな神戸の太陽のもと、イチローにエンジンがかかっていった。同級生の日本ハム坪井との毎年恒例の合同自主トレ。10スイング程度で交代しながらのフリー打撃。ギアを上げながらの最終116スイング目。ミートした瞬間に「これが入ったら終わり!」と周囲へ告げ、その通り21本目の柵越えさせ、この日の振り込みを完了した。

 坪井と約100メートルはあろうかという大遠投を約7分間行い、2時間のメニューを消化。昨年末、川崎市内のジャイアンツ球場で調整していたが、拠点を神戸に戻し、ソフトバンク川崎、そして坪井と相手を変えながら国内調整の総仕上げ中。白髪交じりの頭髪だけが36歳の年齢を感じさせたが、エネルギッシュに動き回り、メジャー10年目のシーズンインへと、また1日、カウントダウンした。

 イチロー

 心境の変化?

 反対ですよ、2月に入ったらスイッチを抜きますから。オフにしますよ。みんなが(急ピッチで調整を)始めたら、僕は遊び出す。それで優越感を感じたい。

 マ軍全体のキャンプインまで、ちょうど1カ月。逆算して仕上げをする天才ならではの調整論は、難解だった。打撃理論で共鳴し合う部分もある坪井と、この日は時間をともにした。「刺激は別にないけど楽しいよ、単純に。ムネもそうだけどね。毎年、来てくれるから。楽しい」と素直な心境を口にする。瞬間、瞬間でもオンとオフを切り替えながら、シーズン前のルーティンを消化してきた。

 練習後にはインタビューを受ける坪井の背後を、故マイケル・ジャクソン氏ばりのムーンウオークで通り過ぎるという、いたずら心がこの日の締め。「ここまではスイッチが入ってますけど2月に入ったら、オフにしてね。本格的にオフに突入かな」と“舌好調”だ。順調に追い込み、また米へ飛びたつ準備を整えているからこそ、自ら一時停止できる調整法。優越感に浸れる1年の始まりを、また確信させた。【高山通史】