【テンピ(米アリゾナ州)3日(日本時間4日)=大塚仁】エンゼルス松井秀喜外野手(35)は慎重を期して開幕に備えることになった。

 軽快に練習をこなしながら、先を見据えていた。「あくまでも悪くならないことが一番。悪くならない範囲で上げていけたらいい」と言葉を選ぶように言った。「調整が予想より早い」と驚いていたソーシア監督も「ヒデキはまだ3、4日は練習をしないといけない」と4日開幕のオープン戦出場は見送り、当面は練習で調整する方針を固めた。双方がスロー調整で一致した。

 昨年の経験が大きかった。当時は前年9月に左ひざを手術したばかりだったが、3月5日にオープン戦初出場。ひざに腫れが出たこともあったが、復帰への意欲が強かったためペースダウンはしなかった。それが開幕直後の4月中旬、ひざにたまった水を抜かなければならない事態を引き起こした。「確かめながら、慎重にやっているのはありますね。去年の経験を生かしてね」。焦らせない方針の首脳陣にも無理にオープン戦に出場させる理由はなかった。

 練習では高度な動きが増えている。この日は実戦形式の走塁練習にも参加。一、三塁の想定で、打球に合わせて一塁から三塁まで走り抜ける動きも無難にこなした。「いい状態で進んでいる」と話しており、現時点での手ごたえが順調なのは間違いない。ただ無理をせず慎重に進めたため、実戦にはもう少しの段階が必要だった。

 この日は同い年のアテネ五輪ハンマー投げ金メダリストの室伏広治(35)が激励のため駆けつけた。

 松井

 久しぶりですね。どうですか。

 室伏

 この近くで練習を始めたんです。一番はロンドンの五輪。もう1回金メダルを取りたい。

 松井

 僕はまず守備に戻りたい。チームが勝つことが一番ですけどね。

 室伏

 年齢を重ねるたびにいろいろあるけど、その中で結果を残しているのを見ると僕も頑張らないといけないなと思います。

 頂点に立った者同士が誓った再びの世界一。はやる気持ちを抑えながら、松井は公式戦開幕だけを見据えていた。