<エンゼルス5-1マリナーズ>◇29日(日本時間30日)◇エンゼルスタジアム

 【アナハイム(米カリフォルニア州)=大塚仁、木崎英夫通信員】エンゼルス松井秀喜外野手(35)が悲劇のサヨナラ勝ちを味わった。マリナーズ戦の延長10回、ケンドリー・モラレス内野手(26)がサヨナラ満塁本塁打を放ったが、本塁付近にできた祝福の輪に飛び込む際に左下腿(かたい)部を骨折し、故障者リスト入りと30日の緊急手術が決まった。歓喜は一瞬にして消え去り、頼れる中心打者を失ったショックがチームを覆った。

 興奮が最高潮に達した直後、大きな落とし穴が待っていた。球団史上8人目のサヨナラ満塁本塁打を放ったモラレスが小躍りしながらダイヤモンドを1周し、大きくジャンプして本塁の輪に飛び込んだ。だが次の瞬間、主役はあおむけになって苦痛に顔をゆがめていた。本塁を踏む際に左足首をひねり、立ち上がることもできなかった。約10分の応急処置の間も球場全体が静まり返る中、モラレスは担架に乗せられて病院へと運ばれていった。約2時間後、左下腿部骨折と翌30日の緊急手術、そして故障者リスト入りが決まった。

 最も悲しいサヨナラ勝ちだった。マ軍のエース・ヘルナンデスに7回まで無得点に抑えられたが、8回にアブレイユのソロ本塁打で同点。松井は9回先頭、四球で出塁すると代走を送られて交代しベンチから勝利を祈った。そして10回1死満塁に飛び出したモラレスの劇的グランドスラム。直後に悲劇が待っていた。ベンチ裏のモニターで見ていた松井も「どこか痛めたんだなというのはすぐ分かりました。何とも言えない」と沈痛な表情を浮かべた。

 穴は大きい。今季チームでただ1人全51試合に出場し、打率2割9分、11本塁打、39打点はいずれもチームトップ。全治や復帰時期は未定だが、チームの3冠王を長期間失うことは借金生活からの浮上を目指すエ軍にとっては大ダメージだ。ソーシア監督は「前に進むしかない」と話しながらも、代替要員については「仮定の話はできない」と明言を避けた。正二塁手のケンドリックやこの日左翼で先発したライアン、捕手のウィルソンら経験のある選手を一塁に回すか、マイナーから若手を呼んでくることになりそうだ。

 一方で打力不足をカバーするには、残された選手が奮起するしかない。この日はハンターも1回に左手首に死球を受けて交代し、今後の出場は当日の状態次第となった。不振で打順を下げられている松井にも再び4番級の期待がかかってくる。この日は6番DHで1安打を放ったが、1回2死満塁、3回2死一、三塁と2度の先制機で凡退。なかなか波に乗れない状況が続くが「自分のやれることをやるだけですよ。どういう状況でも」と逆境からの反攻を静かに見すえた。