ポスティングシステム(入札制度)でメジャー移籍を目指していたダルビッシュ有投手(25)が18日(日本時間19日)、レンジャーズと正式契約を交わした。

 当然ではなく、必然の挑戦だった。日本ハムにドラフト1位指名された04年時点で、すでに米球界から熱視線を送られる逸材だった。だが、ダルビッシュは「興味がない。目標は日本のプロ野球」と断言している。メジャーに興味は持っていたが、プレーすることには無関心だった。

 「行きたい」ではなく、世論、周囲からの「行くべき」という声が出発点だった。進化を遂げるにつれ、日米両球界からメジャー待望論が高まった。ダルビッシュが心を許す関係者からも「メジャーで投げる姿を見たい」などと勧められた。本来ならば戦力ダウンを防ぐため慰留すべき日本ハム球団も、日本の枠に収まらず、羽ばたいていくべき人材と見ていた。高額年俸だからではなく、ダルビッシュの未来を真剣に考えたからこそポスティングを認めた。そんな外的な刺激を受けていくうちに、少しずつダルビッシュの気持ちも変わっていった。

 09年のWBC出場も分岐点になった。本場の空気にも触れ、現実的な将来を見据えるようにもなった。WBC直後の09年5月には野茂英雄氏と札幌市内でプライベートで対面している。この頃から試合前のロッカー室などで、大リーグ中継を熱心にチェックする姿が、チームメートに目撃されるようになった。日本球界への愛着から行使を悩んだ時期もあるというが、周囲の期待が彼の背中を押したのだろう。

 ダルビッシュには毎試合の登板前のルーティンがある。その1つがマウンドに立ち、センター後方に掲げられた日本国旗を必ずじっくり目に焼き付けること。米国では、それもできなくなる。自分自身の挑戦の価値を加味し、機が熟すのを待って今季、勝負に出る。貴重なスターの1人を失い、憂うファンも少なくないだろう。だが心の中に強く「日の丸」を刻み、日本プロ野球を極めた代表の1人としての使命感がある。ダルビッシュが「行くべき」ステージで戦う姿を楽しみにしている。【日本ハム担当・高山通史】