<マリナーズ2-1タイガース>◇9日(日本時間10日)◇セーフコフィールド

 【シアトル(米ワシントン州)=木崎英夫通信員】マリナーズのイチロー外野手(38)が、「走れる3番」の本領を発揮して勝利に貢献した。本拠地でのタイガース戦に「3番右翼」で出場。0-0の4回、チーム初安打となる中前打で出塁すると、15試合ぶりの二盗を決めて、後続の二塁打で先制のホームを踏んだ。長打で打点を稼ぐだけではなく、1番打者として染み付いた走塁がさえた。

 “走れる3番”の活躍を目の当たりにしたタイガース・リーランド監督がぼやいた。「何年か前まではデカイの(長打)というのが常だったが、3番打者に3ランホームランを求める野球の時代じゃないんだ。1点を取りにいくという考えが大切。イチローの3番は嫌だね」。97年にはマーリンズをワールドシリーズ制覇に導くなど今季で監督21シーズン目を迎えた名将は、独自のスタイルを貫いているイチローに脱帽した。

 0-0の4回。中前打で出塁したイチローは、左腕スマイリーの警戒をかいくぐって、5番シーガーの1ボールからの2球目にスタートを切った。強肩レアードの送球より早く、伸ばした右足がベースに届いて二盗に成功。その3球後、シーガーの右翼フェンス直撃の適時二塁打が出て生還した。ウェッジ監督は「あの二盗は大きかった。当たりが強かったから一塁からだったら生還できていないよ」。表情を緩めながら先制点に直結したイチローの盗塁を解説した。

 イチローの盗塁は4月24日以来15試合ぶり今季3個目。いずれもシーガーが打者のときに決めている。イチローは「シーガーだから(打席の方向を)見ずに行けるっていうのが一番大きいでしょう。野球のセオリーを知っている」と言う。これまではスタートを切っても、打者のファウルで成功をふいにさせられるケースが続いたが、メジャー2年目の24歳は、ボールを見送ってアシストする。「冷静な性格はプレーそのもの」と信頼を置くシーガーのコンビで、新たな得点パターンが出来つつある。

 塁上に走者がいなければ単打で出て、足を使って相手に圧力をかけて後続の援護を呼び込む。イチローが染み付いた1番の技量を発揮し、接戦の勝利へと導いた。