藤浪が血染めの粘投を見せた。阪神藤浪晋太郎投手(20)がオリックスとの練習試合に先発し、5回無失点5三振の結果を出した。試合前のキャッチボールで右手中指から出血したが影響はなく志願の5イニング登板。ストレート、変化球を意識してコースに投げ込み、1カ月後に迫った開幕へ、順調な調整を感じさせた。

 1回、2回…。イニングが進むごとにユニホームの右足付け根付近が赤黒くなっていく。5回を投げ終わるころには、遠目にも分かる模様ができていた。

 「血を見ると興奮して、パフォーマンスが落ちやすいので気をつけました。爪(の異常)ではないです。投球に影響はなかったですね」。淡々とした表情で、驚くような言葉を、藤浪は口にした。

 右手中指の爪に“逆むけ”ができていた。そこに試合前のキャッチボール中、親指の爪が強く触れたようだ。痛みはなかったというが出血は止まらず、血染めの投球となってしまった。

 「プロ入り後はあまりない」と言うが大阪桐蔭時代は、たまに爪などから出血することがあったという。その経験から出た「血を見ると興奮して…」という教訓。自らを落ち着かせての5イニングだった。

 序盤は飛ばした。いきなり売り出し中のルーキー小田をストレートで空振り三振。2回、小谷野の5球目にこの日最速の152キロを計測するなど小谷野、T-岡田を連続三振に切った。だが3回に2四球を与えるなどで招いた2死満塁の危機をしのいだ後はスライダー、カットボール、フォークと変化球中心となった。

 「序盤は真っすぐで押せ押せだったんですが引っ掛けたりすることもあった。3回以降は変化球でごまかした感じもあります」。藤浪は率直に振り返った。

 もっとも中西投手コーチは「ストレートを引っ掛けて左打者に“足払い”するのは悪くない。以前は真っすぐがシュート気味に抜けていたが、それはなかったからな」と評価した。

 この時期に5回を投げるのは過去2年にはなかったことだ。「高校時代から試合で作っていくタイプ」という藤浪の志願だった。「侍ジャパン」での登板が10日に予定されていることもあり、開幕前に長い回を投げる機会が少ないことも影響したようだ。

 今季のテーマは「脱力」。「いいときもあるが力が入るときもある。少しずつ、つかみたいですね」とも話した。出血のアクシデントにめげず、自分をコントロールした姿がその成果を物語っているのかもしれない。【編集委員・高原寿夫】