真っすぐ前を向き、広島緒方孝市監督(46)は話し始めた。わずかな迷いもない。ゆっくり、はっきりと13年ぶりの地元開幕戦となるヤクルト戦(マツダスタジアム)へ意気込む。「特に地元開幕だし、気持ち的には3つ勝つつもりでいる」。高い注目度を表すように、報道陣の輪は二重にも三重にもなっていた。指揮官は顔を左右に動かし、全員に届けるように語った。

 初陣にはエース前田を据え、ヤクルトを迎え撃つ。思い描くのはロースコアの接戦だ。接戦をモノにできる強さを求めてきた。「ミスをした方が負ける。ちょっとしたミスが命取りになる。どっちもエースが投げるわけだし、力は張り合っている。かといって怖がってはダメ。思い切ってやれ、と伝える」。いよいよシーズンで真の力が試される。

 新監督初戦のチケットは既に完売。超満員のファンが360度を埋め尽くす。「地の利があるし、相手にとって脅威になる。(選手には)それを有利に使ってほしいね」。硬くなるのは百も承知だ。自身の経験を踏まえて言う。「何年たっても開幕戦は力が入ると思う。経験のない選手は緊張もするだろうけど、ベテランも力は入るよ」。

 現役時代はバットと一緒に寝て開幕の朝を迎えていたが「何も考えていないよ」と験担ぎはしない。指揮官自身には力みもプレッシャーもなく、泰然自若だ。「カープがこれからやる野球を見せてほしい」。24年ぶりの優勝へ、緒方カープが荒々しく船出する。【池本泰尚】