甲子園の大歓声が心地よかった。開幕から約3週間。阪神能見篤史投手(35)が待望の今季初勝利を手にした。

 「(登板間隔が)空いたことが生きたかどうかは…。雨で流れて、外されたことにふがいないという方が…」

 苦悩の日々だった。開幕から2試合はいずれも5回降板。直球が走らず、宝刀フォークも落ちなかった。そんなとき、10日広島戦が雨天中止。メッセンジャーのスライド登板により、能見の登板日が見直され、中10日の調整期間が設けられた。「僕も切羽詰まっているからね」と本音を漏らすほどの危機感。勝てない現状。そしてローテーション再編。屈辱、悔しさが35歳を奮い立たせた。「過去2試合、あまりいいピッチングできてなかったので、今日は最初から飛ばしていきました」。ベテラン藤井のリードに呼吸を合わせ、序盤から直球主体で内角を攻め込んだ。

 相手先発は19歳の田口。「(意識は)あまりしなかったけど、僕も頑張りました」と、ベテランの技も見せつけた。勝ち越し直後の7回、先頭村田に四球を与え無死一塁。代走鈴木が送られた。代打セペダのカウント3-1からだった。「藤井さんが感じ取ってくれたことを読み取りながら。1球目のけん制で逆をつけたので。カウント的にも仕掛けやすいところだったので」と、盗塁をしようとしている気配をバッテリーは察知。けん制を2度続け、足のスペシャリスト鈴木を2年ぶり10度目のけん制死に仕留めた。

 「反省点もありますけど、とりあえず次につながるというか。こういうのを続けていきたい。チームとして勝っているので」

 和田監督の心配の種も1つ消えた。「能見に勝ちがつかないことには、流れ的にも苦しい。今日1勝したことで気分的なものも変わってくる」。雨降って地固まった。【宮崎えり子】

 ▼能見が巨人戦通算19勝目を挙げ、井川慶と並んで2リーグ分立後の阪神投手6位に。能見の巨人戦初勝利は、07年4月7日(東京ドーム)。能見はこのカードで、昨年5月9日(甲子園)から4試合連続して敗戦投手となっていたが、2年越しの5連敗は免れた。