首位DeNAが「先手必勝策」で大投手を沈めた。初対戦となった広島黒田に対し、積極的な攻撃で攻略し4得点をマーク。一時は逆転されたが、相手中継ぎ陣を打ち砕き再逆転に成功した。絶対的な守護神としてフル稼働する小さな大魔神こと山崎康晃投手(22)を温存した一戦で価値ある勝利をつかんだ。4戦連続の逆転勝ちで、貯金は日本一になった98年以来17年ぶりの2ケタ10に到達した。

 前のめりで食らいついた。2点を追う5回だった。先頭の嶺井が左前打で出塁すると、山口がスリーバントの犠打で1死二塁。石川は四球を選んで好機を広げる。19歳の関根がカウント1-1からの3球目を右前にはじき返す適時打で1点差に迫る。さらに、なお一、三塁から下園の1ボールからの2球目で鮮やかなスクイズを決めて同点。黒田にとどめを刺した筒香も1ボールからの2球目を鋭いスイングで中前に打ち返し勝ち越しに成功した。

 黒田を攻め立てた5回の攻撃には、打線の意図が如実に表れていた。嶺井、関根、筒香の安打はいずれも3球目以内で、追い込まれる前に仕掛けた打撃だった。2安打1打点の筒香は「いい投手なので待っても甘い球はこない。1球を見逃したら後で悔いが残る。自分から仕掛けて自分の形でスイングすることだけ意識した」と、積極性が黒田攻略のカギだったと明かした。

 受け身に回らないのは、チーム内で共通認識として確認していた。中畑清監督(61)は「初モノ、ビッグネームにはとにかく攻めていかないとね。追い込まれたら絶対に攻略できない」と、試合前に重ね重ね指示した。ベンチワークでも、指揮官自らが下園のセーフティースクイズで体現。「今年初めてのスクイズだけど鮮やかだったね」と絶妙な策でナインの勢いを後押しした。

 1点差の9回は田中をマウンドに送り出し、ここまで7試合連続登板だった守護神の山崎康を温存した。この日は蓄積疲労が心配されるルーキーにノースローの休養を与えた。「休ませると宣言した中で中継ぎ陣が『俺たちが頑張るんだ』という姿勢を見せてくれた」と中畑監督。ペナントを見据えた、采配は前のめりにならずにどっしり構えた。大投手黒田ものみ込む強さで貯金は2ケタ10に到達。「いや~。すごいね。今日は『すごい』って言葉を使っていいんじゃないか」と誇らしげにバスに乗り込んだ。【為田聡史】

 ▼DeNAが4連勝で優勝した98年の10月12日以来となる貯金10。DeNAが貯金10に到達した年は11シーズンあるが、40試合以下での到達は52、73、78、96年に次いで5度目。この日は1点差の逆転勝ち。1点差試合は12球団最多の11勝(4敗)。特に広島戦では5勝0敗と負けなし。逆転勝ちは4試合連続で12球団最多の13。得意の形で連勝を伸ばした。