勝ち投手みたいなもんや! 阪神のドラフト1位横山雄哉投手(21)が本拠地巨人戦でプロ初先発、デビュー戦で快投を演じた。直球でバットをへし折り、打球を詰まらせる。7回を6安打1失点。援護なく、阪神ルーキー史上初の「デビューG戦勝利」こそ逃したが、8回の代打攻勢で逆転、巨人戦今季初のカード勝ち越しに大貢献だ。次も見たい、次は勝つ!

 何度も何度もマウンドの横山がほえた。1球1球に全力を込めた。自然と「よっしゃー!」と声が出た。プロデビュー戦。聖地で大きく成長した姿を見せた。

 「ちょっとファームとは違う緊張感があって、後半多少バテた面もありました。でもしっかり腕を振ること。全部に気持ちを込めた球を投げられた」

 注目を一身に集めた初回から、直球がうなりを上げた。3番亀井への初球はこの日最速の149キロ。「初回は緊張しました」と笑ったが、上々すぎる滑り出し。巨人打線を詰まらせた。合計3本のバットをへし折った。前日20日にプロ初完封した藤浪からは「横山さんがしっかり投げるので期待してください」とはっぱをかけられた。重圧をはねのけ、力に変えた。ベールを脱ぐとたくましいドラフト1位左腕に、甲子園のボルテージも急上昇。ゼロを重ねるたびに、緊張していた表情も柔らかくなっていった。

 大舞台にもおくさない。初めて侍ジャパンのユニホームに袖を通した昨年11月。台湾での21UW杯でメンバー入りしたが、実は万全の状態ではなかった。それでも「日本を背負っていくのに、そこでやめますとは言えないじゃないですか。投げて良かった。後悔はしてないですよ」。横山の目に迷いはなかった。

 台湾では初めてプロの選手とともに日々を過ごした。1軍経験のある日本ハム中村が登板後の夜、誰よりも早くホテル内ジムのランニングマシンで走る姿を見た。「(中村)勝さんでもこんなに練習をしているんだと思った」。プロの世界の自覚も学んだ。国際試合で先発、中継ぎとフル回転。3試合に登板し10イニングで20奪三振に、最速151キロの更新。参加するだけでなく、数え切れない手土産を吸収した。

 待ちに待ったプロデビュー戦。甲子園には地元山形から両親、祖父母をはじめ総勢19人の大応援団がやってきた。山形中央では春夏2試合で20失点と大炎上した甲子園のマウンドで、強力巨人打線を相手に、7回を最少失点に防いだ。「はるばる山形から家族、親戚、友だちと来てくれた。その中で投げられている姿を見せられて良かった」とホッとした表情を見せた。

 1月の自主トレで左胸鎖関節の炎症を患い、シーズンに出遅れた。それでも一直線に目指してきた聖地のマウンド。「調子自体は良くなかったけど、その中で投げられたことが自信になった」。試合終了後、ベンチ前で勝利のハイタッチに笑顔で加わった。【宮崎えり子】

<横山雄哉(よこやま・ゆうや)アラカルト>

 ▼生まれ 1994年2月21日、山形県中山町。

 ▼身長 183センチ

 ▼体重 84キロ

 ▼投打 左投げ左打ち

 ▼球種 切れ味鋭いスライダーが武器。直球は最速151キロ

 ▼プロ入り 14年ドラフトで有原航平、山崎康晃の外れ外れ1位で阪神入り

 ▼イケメン 「EXILEのTAKAHIROに似ていると言われたことがあります」

 ▼球歴 長崎小2年で始め、中山中で「中山ベースボールクラブ」所属。山形中央では2年の春夏甲子園出場、いずれも初戦敗退。新日鉄住金鹿島では14年都市対抗で5者連続三振。21Uワールドカップで10イニング20奪三振。