日本ハムが総力戦で5時間37分にも及んだ今季初の延長戦を制した。楽天12回戦は8回、11回に勝ち越しながら、追いつかれる苦しい展開も、最終12回に中島、中田の適時打で4点を奪い、逃げ切った。栗山英樹監督(54)があらゆる手を尽くしてもぎとった執念の1勝で2位浮上。今日22日からのソフトバンクとの天王山3連戦で首位奪回を狙う。

 抜け殻になった。栗山監督はやつれ、げっそりとした。今季両リーグ最長5時間37分のドタバタの激闘。8回に1点を勝ち越した。11回にも再度、同じく1点リードを奪った。離しても、離しても、追いすがる楽天。延長12回2死まで、我慢に我慢を重ねた。土壇場でうっちゃった。今季初の延長戦をモノにしたが放心状態だ。「考えすぎて、考えすぎて…。何も答えられない。脳の糖分が、ゼロだよ」。血糖値不足を実感するほど、枯れ果てた。

 妙手連発で、楽天の息の根を止めた。延長12回。1死一塁で果敢に動く。バッテリーコーチ兼任の中嶋を除き、チーム最年長35歳の飯山の経験値が生きた。バントシフトの裏をかき、突いた。バスターエンドランを仕掛けて成功。若手たちから「ユウジさん」と慕われるベテランが、一気に流れを引き寄せた。いぶし銀の仕事に「サインに応えただけです」と、回想も渋い。局面が大胆に好転し、勝負を決める機運ができた。

 高まったムードは簡単には消えない。1死満塁まで広げ、好調の西川が左飛。あと1死で白星の可能性が、完全消滅する寸前。24歳のヤングくせ者・中島が救世主になった。「みんなでつないでくれたチャンス。何とかしたかった」。フルカウントからの7球目。少年野球の選手のように短く握ったバットで白球を、たたきつけた。執念の打球は高く弾み、楽天藤田のグラブへ。二塁内野安打。三塁走者が本塁を駆け抜けた。

 修羅場を知る「ユウジさん」が、もう一働きだ。二塁走者は飯山。アウト、ボールの両カウントでのセオリーを忠実に守ってスタートを切っていた。迷いなく三塁を蹴って生還。藤田が三塁へ送球したが、もぬけの殻だった。名手の状況判断の予測を上回る、快走でダメージ十分の2点目を奪い去った。栗山監督が「素晴らしい。素晴らしい」と連呼する好走塁。主砲の中田が、なお2死満塁から2点適時打。この回、大量4点でジ・エンドだった。

 この日は試合後に花火大会が予定されており、変則の午後4時開始。延長戦の影響で、急きょ中止になってしまった。中田は、ダブルの落胆の楽天ファンも気遣い、疲労感に浸った。「疲れたわ。粘って、勝てて良かった。でも花火大会を楽しみにしていた人には、申し訳ない」。今日22日からソフトバンクと札幌ドーム3連戦。2位へ浮上し、交流戦前の最終カードの天王山を迎える。首位返り咲きへの推進力を、完璧に充電した。【高山通史】

 ▼楽天-日本ハム戦は延長12回で5時間37分。パ・リーグでは歴代4位の長時間試合となった。歴代1位は13年9月4日の日本ハム-ソフトバンク戦の6時間1分(12回)。プロ野球最長は92年9月11日阪神-ヤクルト戦(15回)の6時間26分。