「同率首位決戦」のラストは10-2の圧勝で阪神が3連戦勝ち越しに成功した。そうは言ってもアレがなければどうなっていたかと思うのは、やはり、前川右京の1発だろう。

森下翔太も佐藤輝明も大山悠輔も、みんな打った。先発野手で無安打だったのは今季初3試合連続スタメンマスクの梅野隆太郎だけだったが捕手は他の打者が打てばリードに専念すればいいとも言える。やはり前川の逆転5号2ランは大きかった。

その弾道を見つつ「本当に打ったな」と思ったのである。前日8日の勝利後。7日まで3試合連続本塁打を記録していた前川だが、その日は安打もなく、1人で東京ドームの通路を歩いていた。そこで思わずこんな話をしてしまったのだ。

「『4試合連弾』でなくてよかったような気もするんよね…」。前川は「はあ?」と訳の分からない顔。「とにかく明日は打ってよ」と続けると「はい!」と元気よく応えた。

「ロマン砲」の話だ。ネットで聞く、この言葉。長距離砲として期待されながら結果の出ない選手を言うらしい。阪神で思い出すのは江越大賀だ。現在は阪神の野球振興室アカデミーコーチとして働く江越はロマン砲の最たる存在だったと思う。レジェンドOB金本知憲が指揮を執っていた16年、江越は4試合連続本塁打を記録している。「4試合連弾」は並の打者では打てない。

しかし、それをピークに江越は24年、10年間の現役生活を終えている。最後の日本ハム時代を含め10年で放った本塁打は18本。「もっと打てる」と期待されながらファンには残念な結果だったかもしれない。

「いいことがあればね。体調面も気をつけなければという時期ですから。甲子園に帰ってからもいい活躍を期待しています」。指揮官・藤川球児は「好事魔多し」に留意してほしい気持ちを見せたが野球の結果も「よすぎる」のはこわい感じがするのだ。

その意味で前川が3試合続けて打ち、1試合空けて、また打ったのはいい流れだと思う。惜しいのは、前川に俊足強肩でならした江越のような素晴らしい外野守備があれば守備固めを送られることもないと思うのだが、それも選手の特徴だろう。来年はDH制だ。その筆頭候補になれるよう、まずは江越のキャリアハイ「シーズン7本」を超えてほしい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)