二刀流の進撃を止めたのは虎だった。阪神が開幕から無傷の7連勝を飾っていた日本ハム大谷翔平投手(20)に今季初黒星をつけた。4回に上本博紀内野手(28)が決勝打となる先制中前タイムリー。投げては先発ランディ・メッセンジャー投手(33)が大谷から3奪三振など8回無失点の力投。大谷のプロ初の「リアル二刀流」甲子園登板で、猛虎が意地をみせた。

 普段は表情ひとつ変えない上本が、思わず一塁ベースを回ったところで両手を合わせて喜んだ。7勝無敗の大谷から奪った1点の意味を分かっていたからだ。

 上本 うれしかったけれど、まだ試合が終わっていなかったので、ここで気を緩めたらダメだと思っていました。

 0行進が続いていた4回2死一、三塁。156キロを見せられた直後の3球目に、浮いたフォークがきた。数少ない失投をセンター前に。1本の適時打は、大谷を敗戦投手へと追いやった。コメント通りに試合中に喜んだのは一瞬だけ。6回1死の二塁守備ではボテボテのゴロに猛チャージし、グラブトスで打者走者をアウトに。難敵相手の一戦で集中力が途切れることはなかった。

 攻略へチーム一丸となっていた。昨年6月の交流戦では大谷に8回1安打に抑えられ、11奪三振ゼロ封の快投を許していた。さらにパワーアップした二刀流を崩そうと、この日の試合前練習では打撃投手が通常より1メートルほど打者に近づき、約15メートルの距離(通常の投本間は18・44メートル)での打ち込みを実施。さらに関川打撃コーチは「いつもより力を入れて投げてくれ」と打撃投手に要望。奪った点は1点だけだったが、打線は序盤から積極的に第1ストライクを振って重圧もかけていた。

 お立ち台で知らされた3連勝での勝率5割復帰。今季最多の4万6786人で埋まったスタンドに向かって上本は言った。「今日みたいな全員野球で明日からも頑張りますので、応援よろしくお願いします!」。和田監督は「あれが今、日本球界で一番速い真っすぐだろうから。明日からガンガンいってほしい」と語った。チーム打率2割3分4厘は両リーグワースト。だが、好投メッセンジャーに好守を含め、力を結集し強敵を倒した。猛虎打線が復活するきっかけになり得る白星だ。【松本航】