キヨシDeNAがミラクル首位ターンを決めた。オールスター前最終戦で巨人に今季4度目のサヨナラ勝ちで、同一カード3連戦3連勝をもぎとった。育成出身の先発砂田毅樹投手(19)が7回2失点の好投でゲームメーク。同点の9回に相手守護神の沢村を攻め立て、2死満塁からロペスの三ゴロが失策を誘った。球団としては日本一になった98年以来17年ぶりの首位ターン。中畑清監督(61)は「勝ったよ! すごいよ! 本当に!」と大興奮だった。

 劇的すぎる勝利で主役の座を奪い返した。突如、嵐のような横殴りの雨が降り出した9回裏。勝利の女神が味方した。先頭の飛雄馬が四球で出塁すると、続く梶谷が内野安打。2死二、三塁で筒香が歩かされて迎えた満塁の好機だった。ロペスの鋭い三ゴロが失策を誘い、ベンチから勢いよくナインが飛び出した。今季21度目の大入り満席の大歓声を全身に浴びた中畑監督は、「今日の試合? 思い出せないよ。勝った! すごい! ファンとともにここまでは1回喜んでいいと思う」と、興奮を超えた感情に浸った。

 オールスター前最終カードの巨人戦で3連勝。今季初の同一カード3連勝で6月3日以来42日ぶりに首位に返り咲いた。連勝で迎えた、この日の試合前は「まな板の上のタイ。コイじゃないよ。Aクラスなんだから少し高級にタイにしてよ。これで、やっとタイ(勝率5割)になれる」と、得意のダジャレも切れ味十分。本気度が増した宿敵巨人に捨て身でぶつかっていく覚悟だった。

 波瀾(はらん)万丈の前半戦で首位に立つだけの勝負強さを象徴する一戦だった。同点の7回、筒香が本塁への好返球で代走鈴木を本塁での補殺に仕留め、勝ち越し点を許さなかった。指揮官が「向こうのプログラムが出来上がっていた。完璧なプレーで鈴木を刺せた。チームプレーの中で心のつながりがしっかりとある」と絶賛するビッグプレーで流れを引き寄せた。投手陣も砂田が7回2失点と試合をつくり、9回は山崎康が3人を完璧に抑えて流れを呼び込んだ。

 ジェットコースターのような急激な起伏を進んだ末に、再びてっぺんに立った。快進撃から4月の7連敗。絶好調だった5月から一転、6月は12連敗と苦しみ、交流戦はわずか3勝で最下位に沈んだ。「連敗しながらも頑張ったご褒美じゃないか。まさか最後の巨人戦で3連勝できるとは思わなかった」。それどころか勝率を5割に戻し、夢にも思わなかった「首位ターン」までついてきた。

 山あり谷ありのいばらの道を突っ走ってきた自負もある。本当の勝負が待ち受ける後半戦に向け「球界が盛り上がってきた。自分たちが一番期待している。貯金のないセ・リーグはいろんなことが演じられるはずだし、そのど真ん中にいたいね」と語気を強めた。下馬評の低かった「キヨシ軍団」が旋風を巻き起こし続ける。【為田聡史】

 ▼DeNAが4連勝で6月3日以来の首位に立った。DeNAが前半戦を首位で折り返すのは、大洋時代の64年、横浜時代の98年に次いで17年ぶり3度目。64年は2位阪神に6・5ゲーム差をつけていたが、最終的には2位でV逸。98年はそのまま逃げ切って優勝した。DeNAは42勝42敗1分けの勝率5割。両リーグを通じて前半戦首位チームとしては00年西武の5割3分8厘を下回る最低勝率で、2位巨人とは0・5ゲーム差。セ・リーグで2位に0・5ゲーム差以下の前半戦首位は57年中日、76年阪神、78年ヤクルト、83年広島、10年巨人に次いで6度目だが、過去5度のうち優勝したのは78年ヤクルトしかない。