ソフトバンクの独走は許さない。陽気なメキシカンが力強く負の流れを止めた。日本ハムのルイス・メンドーサ投手(31)が好調ロッテを封じ込んだ。走者を背負っても3併殺と打たせて取り、7回3安打無失点。6勝目を挙げてチームの連敗もストップした。本拠地・札幌ドームでの後半戦初勝利を呼び込んだ助っ人の快投で、勝負どころの8月を白星でスタートさせた。

 やや心配そうな表情から、最後は満面の笑みに変わった。メンドーサの熱い思いが通じた。4点リードの最終9回、増井が2失点。「ちょっとヒヤヒヤしたけど勝ち星をくれたのでうれしかった」。無事に6勝目のウイニングボールを渡してくれた守護神に、ちゃめっ気たっぷりに感謝。チームの連敗を止め、後半戦の札幌ドーム初勝利を呼び込む快投劇のラストは、ちょっぴりスリリングだった。

 好調ロッテ打線に的を絞らせなかった。「全球種、すごく良かった」と、ツーシームなどの直球系に加えてチェンジアップを効果的に使用。3つの併殺打を奪うなど、走者を背負っても打たせて取る投球で相手打線を翻弄(ほんろう)。「バックがよく守ってくれたので安心して投げられた」と、仲間を信頼して先発の責務を果たした。

 戦友へ誓った思いも白球に込めていた。今季から加入したガラテが、前月30日に契約解除で退団となった。メンドーサは球団から発表される前夜、本人から報告を受けたという。最初こそ「オマエの顔を見なくて済む」と笑い飛ばしたが、本心は「すごくショックだね」。ジョークで悲しみを吹き飛ばすしかなかった。

 最後はお互いにエールを交換して別れを惜しんだ。メキシコ出身のメンドーサとベネズエラ出身のガラテは、ともに母国語がスペイン語。2月の春季キャンプ時から気兼ねなく会話を重ね、仲も良かった。「彼ならきっと新天地でも活躍出来るはず。彼の分まで頑張ろうと思う」。気持ちを新たに、発奮材料に変えた。

 熱い魂が、ほとばしったのは6回。2死一、二塁の場面で角中を空振り三振に打ち取った瞬間、大きくほえた。「最後は、とっておきのボールだった」と、試合前半は意図的に投げるのを控えていたナックルカーブでピンチを脱出。有言実行の熱投だった。

 チームの連敗を止めた助っ人右腕に栗山監督も目を細めた。「メンディのおかげで1つ取れた。感謝しています」。勝負どころの8月を白星スタートに導いたメンドーサが、志半ばでチームを去った友の思いも背負って、シーズン佳境もフル回転する。【木下大輔】