斉藤和巳以来の快挙だ。ソフトバンク寺原隼人投手(31)が8回1失点の快投で、今季無傷の7勝目を挙げた。開幕7連勝は球団では05年斉藤以来10年ぶり。5月の1軍昇格からローテーションの軸として働く寺原の力投で、チームの連敗は2でストップ。今季初となる同一カード3連敗の危機を回避し、優勝マジックは35となった。

 開幕から無傷男の寺原が、嫌な流れをあっさりと断ち切った。安定感抜群の投球は、チームが久しぶりに喫した連敗の重いムードにも揺るがない。「3連敗だけは絶対防がないといけない。勝つことだけを考えた」。8回をわずか96球で1失点に抑えた。

 最速150キロの直球とキレ味鋭いスライダーで凡打の山を築いた。唯一のピンチとなった7回、1点を失いなおも2死二、三塁で代打清田を迎える。青いユニホーム一色のQVCマリンが最高潮に盛り上がる中、外角低めにスライダーを投げ続け、空振り三振。「三振を狙っていた。いい感じで腕を振って、スライダーを投げられた」。狙い通りの結果にガッツポーズも飛び出した。

 3回の攻撃で走塁中に細川が負傷。その裏から鶴岡に捕手が交代したが「みんなでミーティングしているので」と気にせずテンポよく投げることだけ考えた。

 12年オフにオリックスからFA移籍。3年契約で古巣へ戻ってきたが、13年は4勝。昨年はわずか1勝で、5月に右膝を手術し、契約最終年の今季へかけた。推定年俸は4000万円減の4500万円で再出発。キャンプはB組。開幕ローテーションにも入れず、帆足らと2軍でじっと出番を待った。

 5月5日に1軍昇格すると、先発すれば負けなし。中継ぎでも安定した投球で救った。1人で貯金7つを稼ぎ出している。

 工藤監督は「下半身が使えると、制球が落ち着く。疲れはあるだろうが、下半身はしっかりしている」と話す。実際、手術した右膝の状態はいい。毎週打たなければいけなかったヒアルロン酸の注射も、最近は2週間に1回のペースになっている。先日は投手練習に9歳の長男嘉希(よしき)君を初めて連れてきた。頼もしい父の姿を見せていた。

 FAでの復帰時「自分はここでやり残したことがある」と話していた。横浜とオリックスでは2桁勝利をマークしたが、ソフトバンクでは03年(当時ダイエー)と今年の7勝が最多だ。開幕からの7連勝は05年の斉藤以来。「和巳さんは神様ですね」。伝説の存在を追うのは、何よりのモチベーションに違いない。01年ドラフト1位がホークスでの最高成績を収め、連覇への勢いを加速する。【石橋隆雄】