大乱調からV打で変身! 阪神藤浪晋太郎投手(21)が、ヤクルトを7回2失点に抑え、3年連続2桁勝利を達成した。高卒1年目からは松坂大輔以来、阪神では江夏豊以来の快挙。序盤は押し出し、暴投で失点の大乱調。4回に自ら勝ち越し二塁打を放ち、白星をたぐり寄せた。藤浪が打点を挙げれば11戦不敗の頼もしさ。チームの6連勝は今季最長タイ。貯金も8だ。

 借りは自分で返す。藤浪が野手顔負けのミート力で三塁線を破った。同点で迎えた4回2死二、三塁。古野の初球、低めシュートを引っ張り、2点二塁打を決めた。序盤は制球に苦しみ、押し出し四球、暴投で2失点。試合の主導権を奪い返す一打に「いいところに飛んでくれた。ラッキーでした」と照れ笑いした。

 3回までに5四球ながら、7回を7奪三振4安打2失点。リーグ最速の10勝目だ。高卒1年目からの3年連続2桁勝利は西武時代の松坂以来14年ぶり、阪神に限れば江夏以来46年ぶり。「1年目から我慢して使ってもらって…」と謙虚に振り返ったが、誰もが認める快挙を成し遂げた。

 29と29。2つの数値に強みが隠されている。藤浪には人一倍筋肉が張っている箇所がある。二の腕付近の上腕部と肘下の前腕部、両方の太さを測った時のことだ。上腕29センチに対し、前腕も29センチをたたき出した。一般的なデータを見れば、前腕は上腕よりも1センチ以上細い。パンパンの前腕は投手藤浪の宝物だ。

 「特別にそこだけを鍛えたというわけではないので、体質ですかね。前腕は肘を守る筋肉。リストに力を加える場所でもあり、スライダーを投げる時にすごく張る場所でもある。太くて悪いことはないですよね」

 1年目の13年は137回2/3、14年は163回、今季はすでに140回を投げ、200イニングも狙える。球速が落ちない、壊れない。剛速球とスタミナのベースには発達した前腕がある。

 この日は4回無死、左足を上げる際にグラブを持ち上げる位置を、捕手鶴岡と身ぶり手ぶりで確認。「腕を上げた方がいい感じで投げられている」。金言を取り入れ、制球力を向上させた。修正能力の高さは3年連続2桁勝利の軸だ。

 打点を挙げた試合は11戦全勝。不敗神話を継続し、虎を6連勝&今季最多貯金8に導いた。10勝目を「通過点」と表現し、再び中5日で20日巨人戦に向かう。「自分でゲームを引っ張れる投球をしたい。1点も取られない、それに近い投球が理想」。首位独走の象徴になる。【佐井陽介】

 ▼藤浪がプロ入り初のV打を放ってセ・リーグ10勝一番乗り。高卒1年目から3年以上続けて2桁勝利は99年入団の松坂(西武)以来で、2リーグ制後9人目。セ・リーグでは堀内(巨人)江夏(阪神)に次いで3人目。高卒3年目以内にセ・リーグ10勝一番乗りは68年堀内(巨人)87年桑田(巨人)91年川崎(ヤクルト)00年五十嵐(ヤクルト)に次いで5人目だが、今季はパも高卒3年目の大谷(日本ハム)が一番乗り。両リーグとも高卒3年目以内はセで堀内、パで鈴木啓(近鉄)が記録した68年以来2度目。

 ▼これまで10勝一番乗りが遅かったのは、セが88年の7月30日(中日小野)で、パは93年の8月7日(オリックス野田)。8月14日の一番乗りはセ、パを合わせ最も遅い記録となった。