やったぜ、ベイビー! 楽天ゼラス・ウィーラー内野手(28)が日本ハム戦で値千金の同点2ランを放った。2点を追う8回2死一塁で代打で登場。日本ハム宮西の直球を左翼スタンドへ運んだ。7月29日に長男ゼィータ君が誕生。父親となって初めての本塁打で敗色濃厚の雰囲気を変えた。チームは9回に聖沢諒外野手(29)のサヨナラ打で勝利し、3位とは5ゲーム差となった。

 パパは燃えていた。2点を追う8回2死一塁。ウィーラーは代打で打席へと送られた。求められるのは流れを変える1発。本拠地全体からの期待を一身に受けると、ニヤリと笑った。「小さい頃から闘志を持って打席に立っている。大人になってもそれを出している」と気持ちが高まった。

 ボールを見極めた。日本ハム宮西が厳しくコースを突いてくるが、我慢した。手を出さずボールカウントは3-1に。狙い通りの展開に持ち込むと、後は仕留めるだけだった。外角、やや甘めに入った140キロの直球を踏み込んで振りぬいた。「ストライクカウントだったから、どんな球でも仕留められるようにした」。打球は仙台の夜空を切り裂き、左翼スタンドへ飛び込む同点2ランとなった。

 息子へ届ける1発だった。7月29日に長男ゼィータ君が誕生。米国に残してきた婚約者とは毎日連絡を取り、日々の成長を知るのが楽しみになっている。「110%モチベーションが上がっている」と家族が増えたことが、活躍への原動力となっている。

 指揮官へも恩返しの1発となった。出産を見届けるために同27日に米国へ一時帰国。CS争いに踏みとどまる中で、チームにとっては手痛い離脱だった。帰国前に大久保監督の下へ訪れ、「申し訳ない」と謝罪した。それでも快く送り出された。7日に再来日し、ようやく出した結果。日本ハム斎藤の勝ち星を消し、敗色ムードを消した。大久保監督も「スタメンから外れても変わらない姿勢はすばらしい。大きな1発だった」と目を細めた。

 同点弾で勢いに乗ったチームは9回に聖沢がサヨナラ打を放ち、勝利。3位とのゲーム差を5に縮めてCS争いに踏みとどまった。殊勲のウィーラーはお立ち台で気勢を上げた。「明日も行くわよ!」。新米パパはおちゃめで、そして格好いい。【島根純】