巨人打線が、東京ドームを舞台に、巨人版「ザ・ヒットパレード」を披露した。3点ビハインドの5回、打率部門1位を獲得した経験を持つ長野久義外野手(30)の右前打をオープニングテーマに、球団タイ記録の1イニング10安打で12得点を挙げた。1イニング6二塁打はリーグタイ記録。記録ずくめの猛打ショーで阪神に連勝し、1・5差に詰め寄った。

 球場に響き渡る「ヒッパレ~♪ ヒッパレ~♪」のチャンステーマが、巨人版「ザ・ヒットパレード」を視聴するファンのテンションを上げた。長野の右前打をオープニング曲に、村田修一内野手(34)の適時二塁打で風穴をあけ、小林の適時打で1点差、井端の同点犠飛の後、片岡治大内野手(32)の適時打で勝ち越し。さらに坂本、亀井らの適時打を含む1イニング球団タイ記録の10安打で12得点。リーグタイ記録の6二塁打で“番組”を豪華に彩った。

 緊急“企画会議”が行われたのは、5回だった。4回まで無安打投球の能見に対し、村田“総合プロデューサー”を中心にベンチ前で円陣。天敵攻略の台本を綿密に作製した。視聴率ならぬ、安打率アップの内部情報は極秘だが、右打者に徹底されたのは外角のシュート、チェンジアップの狙い打ち。果敢に踏み込み、鮮やかな「ヒットパレード」を奏でた。

 最高潮に盛り上げたのは、球界一のパフォーマー・片岡だった。「(ダンスに)名前でもつけてくれれば、また盛り上がる」とチーム内にダンスパフォーマンスを浸透させた男は、勝ち越しの2点適時打とチーム6本目の二塁打で2点を加えた。かつて、フジテレビで放送され、茶の間を熱くさせた音楽番組「ザ・ヒットパレード」。司会のミッキー・カーチスのように、片岡が華麗に進行した。

 総合演出を務めた原監督は「見事です。見事と言うしか。多くの言葉を使うことはできませんね」と出演者をたたえた。振り返れば96年7月9日の広島戦、1イニング9連打を含む15安打で10得点。最大11・5差を逆転した「メークドラマ」の始まりだった。あれから19年、2得点上回る「新・ヒットパレード」に、盛大な拍手と歓声が注がれた。【久保賢吾】

 ▼巨人が5回に10安打で12点の猛攻。巨人の1イニング10安打は、41年5月11日阪急戦の4回、51年8月8日広島戦の7回に次いで3度目の球団タイ記録。巨人の1イニング最多得点は72年6月23日ヤクルト戦の6回に記録した13点で、12点以上は前記ヤクルト戦以来、43年ぶり4度目だ。5回の10安打は単打4本、二塁打6本で本塁打は0。72年ヤクルト戦の13点は柳田の2ランと高田の満塁弾があり、巨人が本塁打なしで1イニング12点以上は、この日と同じく10安打で12点の41年5月11日阪急戦の4回以来、74年ぶり。なお、巨人の1イニング2桁得点は通算11度目になるが、阪神戦では初めて。

 ▼巨人は5回に二塁打が6本。1イニングの二塁打は13年8月4日楽天が日本ハム戦の5回に記録した7本が最多で、6本以上は1リーグ時代の48年10月16日巨人が大陽戦の5回、86年6月3日広島が大洋戦の9回、前記楽天に次いで4度目。巨人では67年ぶりのタイ記録で、セ・リーグでも86年広島に並ぶタイ記録。