阪神ランディ・メッセンジャー投手(34)が、復活の8勝目だ。8回3安打1失点。11三振を奪い、約1カ月ぶりの白星をマークした。苦しんだ右腕の8月初勝利で、前カード巨人戦で3連敗を喫したチームは、これで3連勝。貯金を今季最多タイの8に戻すと、夜には2位巨人が敗れて2・5ゲーム差に。悲願Vへ再加速や。

 何もかもきれいさっぱり振り払い、剛腕が帰ってきた。メッセンジャーが150キロ前後の直球と落差の大きいカーブでDeNA打線を黙らせた。

 「とても気持ちがいいです。スミマセン、ヒサシブリネ」

 バックネット裏最前列からは「ダディ!」と応援に駆けつけた愛娘、愛息たちの声が飛ぶ。お立ち台で、その声援に笑顔で応えた。7回までは1安打無失点。8回に1点を失ったが、文句なしの今季8勝目。7月26日DeNA戦以来、8月初勝利だ。

 「特に前回の登板が悪ければ忘れなければいけない。しっかりと切り替えて、きれいに忘れてマウンドに上がりました」

 前回18日巨人戦は7安打5失点で今季最短3回1/3でKO。チーム3連敗につながった。「東京ドームで自分が連敗の流れを作ってしまった。やり返すという思いもあった」。今度はチームの波に乗り、3連勝で締めた。和田監督は「東京ドームの巨人戦は気合が入りすぎて、力で何とかねじ伏せようという感じだった。今日は変な力みがまったくなかった」とうなずいた。

 悪い流れは自らで断ち切る。前日22日の練習後。京セラドーム大阪のベンチ裏で足を止め「仕切り直し」と口を開いた。5月末の1軍復帰以降の3カ月間、験担ぎで登板前日は沈黙を続けた右腕の異例の行動。白星に恵まれなかった8月を過ごし、ルーティーンを変えた。なんとも験担ぎにこだわる男だ。

 白星を挙げると次の試合でも洗濯した同じアンダーシャツや下着を着用。次につながるように-。少しよれたって、勝ち続けた勲章だ。負ければアンダーシャツや下着は即刻捨てられる。集中を切らさないことにもこだわる。1試合通して使うペットボトルは1本だけ。同じものに手を伸ばし、のどを潤す。毎イニング、栗山通訳が同じ容器に水を補充。最後まで使い通す。同じキャップをキュッとひねり、試合も締める。全ては勝利のためだ。

 そんな男が記録を塗り替える豪快な復活劇。11奪三振のKラッシュだった。通算奪三振は外国人投手3位。「うれしいけれど、本当に覚えてもらえる投手になるためには、優勝するチームで投げないといけないと思っているよ」。ここからが本番だ。リーグ60勝一番乗りを呼び込んだ右腕が、V奪回で名実ともに球史に名を刻む。【宮崎えり子】

 ▼メッセンジャーが11三振を奪い、今季5度目の2桁奪三振。外国人投手がシーズン5度の2桁奪三振は、00年メイ(巨人)04年ベイル(広島)に並び3人目の最多タイ記録だ。今季のDeNA戦の奪三振数は10→7→12→4→6→11と、42イニングを投げて投球回数を上回る50三振。これでメッセンジャーの通算奪三振は894。スタンカ(南海、大洋)を超え、外国人投手としてプロ野球3位に浮上した。

 ▼メッセンジャーは今季、外国人先発投手との6度目対戦でようやく初勝利。前試合まで5試合で0勝4敗、防御率6・35と苦しんだ。今季京セラドーム大阪では、4試合に登板し1勝0敗。防御率は1・55で、今季複数登板した球場では最高(29イニングで自責点5)。

 ▼阪神が113試合目にセ・リーグ60勝一番乗り。08年(7月29日、93試合目)以来7年ぶり(同年は13ゲーム差を逆転され2位)。過去5度のリーグ優勝年での60勝一番乗りは、62、85、03、05年と4度。今年も続けるか。