優勝と偉業へ、ソフトバンク柳田悠岐外野手(26)の猛スパートだ。初回の4点先制から決め手を欠いたまま突入した延長戦。ドローもちらつく12回に29号決勝ソロを左翼に放り込んだ。延長戦では今季3本目という接戦男の1発で5時間13分ゲームにケリ。優勝マジックを16と減らし柳田はトリプルスリー(3割、30本塁打、30盗塁)を視界にとらえた。

 鳴り物のない午後11時前の静かな西武プリンスドームに柳田の快音だけが響いた。西武7番手田中の148キロ外角直球をフルスイングした打球は、中堅よりの左翼スタンドへ消えていった。

 「完璧。しっかり振れたんで。中継ぎの投手が頑張ってくれていた。あんなに遅くまで(ファンが)残って応援してくれていたので、何とか勝ちたかった」

 前日は3-13の大敗。この日も初回4点先制から行き詰まった状態で回を重ねていた重いムードを吹き払った。ベンチのナインは大興奮で柳田を出迎えた。バンザイでハイタッチした工藤監督は「(柳田は)振ると、何かが起きる。そんなに大きな角度をつけなくてもホームランになる」と、勝負強い3番打者をほめた。

 8回に追いつかれ、今季14度目の延長戦へ。延長11回裏には2死満塁のピンチを柳瀬が抑えた。流れが来た直後、ここまで安打がなかった柳田が決めた。今季チーム最長5時間13分の戦いを終え、疲労困憊(こんぱい)の表情で「疲れました…。勝ててよかった」。コーラを手に西武プリンスドーム名物の長い階段を上った。

 延長戦を戦っているころ、2位日本ハムが東京ドームで敗れた。優勝マジックは2つ減って16に。値千金の29号ソロで、柳田は目標とするトリプルスリーへ最大の関門とされる30発へ王手をかけた。

 昨年は144試合で15本塁打。持ち味の長打力を今までは発揮できていなかった。藤井打撃コーチは「昨年1年間、投手の軌道を見てきたことで、今年は慣れもあるしタイミングも取れている。強く踏み込んで体のスピンで打つ。しっかり1本足ができているときはよく見えている」と解説する。この日の本塁打もしっかり左足1本で立ち、体全体ではじき返した。

 西武プリンスドームには侍ジャパン小久保監督がテレビ解説で来ていた。背番号9を受け継いだスラッガーは、後継者にふさわしい活躍を目の前で披露した。【石橋隆雄】

 ▼柳田が延長12回に勝ち越しの29号を放ち、延長戦で打った本塁打が5月5日ロッテ戦の11回、6月3日DeNA戦の11回に次いで今季3本目。パ・リーグで延長イニングにシーズン3本塁打は07年ローズ(オリックス)以来10人目の最多タイ。ソフトバンクでは01年小久保に次いで2人目。