今季限りで引退することを決断した中日朝倉健太投手(34)が16日、ナゴヤ球場で会見を開いた。笑顔でプロ16年間を振り返り「自分の中では幸せな野球人生を送れたと思う」と家族やチームメートに感謝した。竜投を支えてきた通算65勝の生え抜き右腕が、ユニホームに別れを告げた。

 目に涙はなかった。ドラゴンズ一筋、16年。現役引退という大きな決断を下した朝倉は笑顔だった。「正直、ほっとしている。4、5年前から自分が思ったボールが投げられなくなっていた。なんとか気持ちだけで頑張ってきたが、自分でやりきったというのがある」。悔いはない。晴れ晴れとした表情だ。

 栄光も、挫折も味わった。地元の愛知・東邦から99年ドラフト1位で入団。06年には自己最多13勝を挙げてリーグ優勝に貢献した。チームが日本一になった翌07年も12勝を挙げた。だが、08年に右腕が選手生命を脅かす血行障害に。近年は右肘の故障などで不振が続いた。昨季は4年ぶり白星を手にするも、今季は中継ぎとして登板3試合にとどまっていた。

 家族には8月下旬に「どういう形であれ、今年でやめるよと言いました」と、意思を伝えた。8歳の長男・大空(そら)君は野球を始めたばかり。「もうちょっと、(野球をする姿を)見せてあげたいとは思ったけど、ここらへんがパパの限界だよとは言いました。上の子は泣いてましたね」。これまで支えてくれた家族にとっても大きなターニングポイントだった。

 第2の人生も野球に携わりたいという思いがある。今後については「一野球好きな34歳に戻れる。(今後は野球に)関わっていきたい願望はすごく強いけど、そればっかりは自分で口にはできない。自分で決めることじゃないので」と思いを語った。引退セレモニーなども検討されており、西山球団代表は「球団に貢献し、実績も積んでいる。きっちり送り出したい」と話した。

 最後にファンへの感謝の言葉を口にした。「名古屋という地ですごい声援をもらって投げてきたのはすごくうれしい気持ち。すごく幸せな野球人生を送れたのでありがたいと思う」。投手王国を支え、ファンから愛された背番号14が、笑顔で現役生活にピリオドを打った。【桝井聡】