ルーキーが決めた。日本ハムのドラフト3位、浅間大基外野手(19)がソフトバンク24回戦の延長11回、プロ初のサヨナラ二塁打を放った。高卒新人のサヨナラ打は球界では86年10月10日に清原(西武)がマークして以来29年ぶり、球団では史上初の快挙だ。連日の劇的勝利で、ソフトバンク戦は6カードぶりに勝ち越し。クライマックスシリーズ(CS)での下克上へ向けて、大きな弾みを付けた。

 歴史的な一打が、右中間を転々と弾んだ。打った浅間は走りながら右手を何度も突き上げた。延長11回1死一、二塁。「打てばヒーローになれる」と強気だった。先輩からのプレッシャーもあった。「早く終わらしてくれと言っていたので、自分で決めてやろうと」。柳瀬の146キロ直球をジャストミート。笑顔で駆けよる先輩らを両手でガッツポーズしながら迎えた。

 栗山監督は興奮を隠しきれないように早口でまくし立てた。「浅間で始まって、浅間で終わった」。3回は先頭で、初対戦で今季無敗のバンデンハークの初球を三塁打。続く石川亮の犠飛で先制のホームを踏んだ。守備でも随所に堅実なプレーを披露。劇的な幕切れとなったプロ初のサヨナラ打は、高卒新人では西武清原以来29年ぶりで球団史上初の快挙。メモリアルな一打でソフトバンク相手に6カードぶりに勝ち越した。

 「自信は少なくとも、前に上がってきた時よりあります」。7月3日に2軍に再調整で降格する前、栗山監督から期待を込めてゲキが飛んでいた。「次に上がった時が本当の勝負だ」。守備は送球練習を徹底。打撃では低めの変化球対策に取り組んできた。13日に再昇格後は9試合中7試合でスタメン。25打数8安打で打率3割2分。同監督も「あいつは前に進んでいる」と認める。攻守で存在感を放ち、先輩を刺激している。

 恩師は、規格外の活躍を確信していた。今夏限りで勇退した横浜の渡辺元智前監督(70)は昨年のドラフト後、球団関係者に言った。「浅間は本当にすごいから。野球に対する姿勢と技術。見ていて下さい」。多くのプロを輩出した名将が、見立てた通りにルーキーながら結果を残した。

 お立ち台でも度胸が据わっている。端正な顔立ちをグシャグシャにしながら「最高に、うれしいです!!」と、絶叫した。最後は着ていたTシャツに書かれた「伝説になる覚悟はあるか」との問いに、自信を持って「あります!」。熱い心意気は、下克上を目指すCSへ期待感を膨らませてくれた。【木下大輔】

 ▼浅間がプロ初のサヨナラ安打。高卒新人のサヨナラ安打は86年10月10日清原(西武)がロッテ戦で記録して以来、29年ぶり。ドラフト制後(66年以降)は2人目で、2リーグ制後でも6人、8度目。日本ハムで高卒新人のサヨナラ安打は初めてで、浅間の19歳3カ月は57年6月22日山本八郎の19歳9カ月を抜いてサヨナラ安打のチーム最年少記録となった。

 ▼日本ハムが2試合連続サヨナラ勝ちを収めた。2試合連続サヨナラ勝ちは09年5月2日西武戦(延長11回7-6)、5月3日同戦(延長12回6-5)以来6年ぶりで、北海道移転後は3度目。日本ハムは東映時代の61年7月13日近鉄戦、14、15日阪急戦と97年4月22、23、24日ダイエー戦の2度、リーグ記録の3試合連続サヨナラ勝ちをマークしている。