西武浅村栄斗内野手(24)が驚異の満塁男ぶりを見せつけた。継投が裏目に出て同点に追いつかれた直後の8回裏1死満塁で、楽天クルーズから勝ち越しの13号グランドスラムを放った。満塁での通算打率は4割4分8厘と無双状態。チームにとっても今季9本目の満塁弾で80年の球団記録に並んだ。劇的勝利で4連勝し、CSを争う4位ロッテとのゲーム差を1・5に広げた。

 浅村が大物を釣り上げた。その名はグランドスラム。8回1死満塁。楽天クルーズの153キロの内角寄り直球に、フルスイングで竿(さお)をしならせた。最高のアタリだった。大魚を釣ったかのごとく、竿のようなバットを振り上げたままポーズを決める。そのままバックステップで一塁ベース付近まで歩み、満塁弾が跳ねた左翼席の“海面”を眺めていた。最近、釣りにハマっている男が珍しくホームベース手前で右拳を突き上げた。「メッチャ、うれしかった。大きな試合で自分の一打で勝てたので」。余韻は消えなかった。

 西武は満塁弾という大物が大好きだ。今季4本で通算16本の歴代1位を誇る中村を含め、浅村の今季2本目でチーム9本目のグランドスラム。35年前の球団記録に並んだ。立役者は「(理由は)分からない。たまたまじゃないですか」と言葉が見つからない。だが満塁での思考はシンプル。「犠飛でもいい。楽に打席に入れる」。苦手意識のあったクルーズに対しても同様だった。「得点圏なので強引にいかないように。最悪詰まって二塁手の頭を越えるぐらいでいい」。だが詰まるどころか、打球はすっ飛んでいった。だから「あんなところに打球が行くとは思わずパニックになった」と驚いた。

 現在、球界一の満塁男、と言っていい。中村の専売特許のイメージが強く、浅村も「すごすぎて僕はマネできない」と言うが、満塁での通算打率は4割4分8厘、4本塁打、73打点を誇る。通算336打点に占める満塁時の割合は約22%。中村の14%や満塁男の異名を知らしめた駒田徳広の21%をも上回る。屋号を背負えるだけの勝負強さを数字が物語っている。

 田辺監督も「ミスだった」と反省した継投の失敗も一振りで救った。「今日の試合が1つのヤマ場だった気がする。明日から全勝できる気がします」。CSという漁場へ、浅村が最高の釣果を挙げた。【広重竜太郎】

 ▼浅村が7月11日日本ハム戦以来、今季2本目(通算4本目)の満塁本塁打。今季通算80打点のうち満塁チャンスで20打点を稼いだ。浅村はプロ通算でも満塁での打点が全打点の22%を占める。これは「満塁男」として定評があった駒田徳広の21%や、通算最多の満塁本塁打16本を記録する中村剛也の14%をしのぎ、満塁弾は4本と少ないが打点を量産している。

 ▼西武は今季チーム9本目の満塁本塁打(中村4、浅村2、木村、メヒア、森)。80年の球団最多記録に並んだ。パ・リーグ最多は90年オリックスの11本(セ最多は50年中日の12本)。