富士大のドラフト1位候補、多和田真三郎投手(4年=中部商)が我慢の秋を過ごしている。春以来の右肩痛で、6月の全日本大学選手権も、この秋の北東北リーグ戦も投げることはできなかった。運命のドラフト会議(10月22日)まで1カ月足らず。同大グラウンドで黙々と練習を続ける右腕に、現在の状態、プロへの思いを赤裸々に語ってもらった。

 「投げられない悔しさがある」。これが今の多和田の気持ちだ。春のリーグ終盤に生じた右肩腱板(けんばん)炎症が完治せず、秋は登板を見送った。エースを欠いてもチームは全勝優勝。「強いなぁ、と。安心して自分のことだけを考えてました」。次にマウンドに上がることを思い浮かべ、スクワットや走り込みなど、体作りに打ち込んだ。

 最後の秋に投げずとも、北東北リーグに残る大記録を残した。1年春から毎シーズン投げ、これまでの247個を大きく上回る299個の通算最多奪三振をマーク。14年秋から15年春にかけて56回の連続無失点記録も打ち立てた。悔やまれるのは36勝の最多勝記録。通算32勝まで迫っており、この秋投げていれば更新できていたはずだった。豊田圭史監督(31)は「今まで十分貢献してくれたから」。投げたい気持ちをなだめ、将来を優先させた。

 21日にプロ志望届を提出した。今まではプロへの気持ちを表に出さなかったが、今は「評価してくれる球団に行きたい」と素直に語る。ただ、投げずに来月のドラフトを迎えるのは「不安です」とも明かした。現在はキャッチボールだけだが、10月から本格な投球練習を始める見込み。来月は神宮大会東北地区代表決定戦(24~26日、開成山)に向け社会人チームとのオープン戦を毎週組んでおり、状態が良ければどこかのタイミングで投げる予定だ。

 「(投げる)チャンスが来るんじゃないかと思う」。久しぶりの実戦登板を一番楽しみにするのは、多和田自身だ。【高場泉穂】