男(おとこ)気が望みをつないだ。広島黒田博樹投手(40)が敵地甲子園で9回途中まで今季最多126球。8安打無失点の熱投でチームを勝利に導いた。打席での執念が攻撃陣の火をつけ、登板過多の中継ぎ陣の負担を減らそうと、8回も9回も続投を直訴した。3位阪神との直接対決を制し、7日中日戦に勝てば3年連続クライマックスシリーズ出場が決まる。望みを現実のものにするために、最終戦も黒田は男気でブルペンで登板を待つ。

 マウンドを降りる黒田は、中崎にすれ違いざまに「すまん」とわびた。逆転のCS出場に負けられない一戦。無失点のまま9回のマウンドにも上がった。だが、1死一、三塁のピンチを招き降板となった。

 「いつもと変わらぬプレッシャーと緊張感を持ってマウンドに上がった。(9回は)自分で行くと言っておいて、しっかり抑えられなかった。最後は申し訳ない」

 8回1/3を無失点で11勝目。負ければCS出場が消滅する大事な試合で勝利に導いた大ヒーローだが、ただ勝つだけではない。登板過多の救援陣の負担を減らすべく最終回も続投した。「大瀬良も中崎も連投が続いている。相談されましたけど、行くと言いました」。40歳での完封は逃したものの、黒田の存在意義を証明する貴重な勝利だった。

 投球だけではない。打席での執念が野手陣に火をつけた。両軍無得点の3回だ。黒田は追い込まれてから藤浪の球に食らいついた。真っすぐ、カットボール、カーブもバットに当てた。7球連続ファウル。155キロ直球に見逃し三振に終わるまで13球を投げさせた。決勝弾の松山は「僕たちもやらないといけないと思った」。勝利への執念をチームに伝えていた。

 緒方監督も「投球だけじゃない。マウンドに立っているその姿。姿勢。予定のイニングを超えても投げると言って聞かないし。中崎と大瀬良を休ませたいと言ってくれた。最後は納得してもらう形で代えたけどね。野手も何も感じないわけがないよ」と称賛を惜しまなかった。

 7日の中日戦(マツダスタジアム)に勝てば3年連続クライマックスシリーズ出場が決まる。当初は福井の先発が予定されていたが、中4日で前田を投入する見込み。それだけではない。黒田も「最後の試合も打者1人でも行ってくれと言われれば行くつもり。少しでも力になれれば」。この日に今季最多126球を投げたにもかかわらず、中2日でブルペン待機を直訴している。黒田がつないだ望みは、総力戦で現実のものとする。【前原淳】

 ▼40歳の黒田が11勝目。40代投手のシーズン勝利数は48年若林(阪神)の17勝が最多だが、2リーグ制後に40代で11勝は05年工藤(巨人)06、08年山本昌(中日)08年下柳(阪神)に並び最多。また、黒田の防御率は2・55。2リーグ制後、規定投球回に到達した40代投手では89年村田(ロッテ)の2・50に次いで2番目に良い数字となった。

 ▼セ・リーグの3位決定は7日のリーグ最終戦まで持ち越し。広島が7日の中日戦に○ならば広島が3位、広島が△か●の時は阪神が3位となる。阪神は70勝71敗2分け、現時点では3位で全日程を終了。CSが始まった07年以降、CS進出の可能性を残して全日程終了は10年日本ハム、15年西武に次いで3度目。10年日本ハムは4位ロッテに0・5ゲーム差の3位で終了も、ロッテが残り2試合に○○で4位へ転落。今年の西武はロッテが残り5試合で1勝4敗ならば3位だったが、ロッテが2勝して4位に。他球団の結果待ちでCS進出はまだない。