左翼スタンドは真っ赤に染まり、闘志むきだしの黒田がいる。広島ナインは奮い立った。男(おとこ)気という言葉で凝縮するにはあまりに忍びない。だが目に見えない力は確かに、伝わった。緒方監督も感動を「もう投球だけじゃない。その姿、姿勢。野手が何も感じないわけがない」と言葉にした。

 始まりは黒田の13球だった。3回1死の打席。追い込まれてから8球ファウルで粘った。見逃し三振に倒れたが、藤浪に13球を投げさせた。「ああいう姿が伝わっていく」と指揮官。言葉どおり4回には松山がカットボールを右翼ポール際に運び、女房役の石原も2点適時打でつないだ。

 6回には1死一塁から田中広輔内野手(26)が右中間に8号2ラン。「また際どいところかなと思いましたが、今日はしっかりフェンスを越えてくれてよかったです」。引き分けだった12日の阪神戦(甲子園)で延長12回に柵越えしながら打球が跳ね返り、ビデオ判定後もインプレーと判定される幻の本塁打を放っていた。

 意地の結集で勝ち、3位阪神とゲーム差なし。最終戦の7日中日戦(マツダスタジアム)ですべてが決まる。「もう勝ってCSに行くしかない」と緒方監督。広島が必ず奇跡を起こす。【池本泰尚】