巨人が所属選手の野球賭博関与を発表したことを受け、日本野球機構(NPB)の熊崎勝彦コミッショナー(73)は5日、不退転の決意で徹底調査に臨む決意を示した。都内で会見を開き、ファンへ謝罪するとともに、厳正に対処する姿勢を強調。同日に調査委員会に調査を委嘱し、徹底解明を求めた。

 熊崎コミッショナーは厳しい表情で徹底究明への決意を示した。「野球界にとって大変悔やまれる、至極残念なこと。多くのファンや関係者が納得できるような厳正な手続きを進めるのが裁決者としての権限であり役割だと強く認識している」。東京地検特捜部出身らしく強い口調で切り出し「ファンの皆様、関係者の皆様にご迷惑をおかけしたことを大変申し訳なく思っている」と頭を下げた。

 同コミッショナーは1日に巨人から一報を受けると、早急な詳細報告を要請した。この日の午前中に巨人からあらためて報告を受け、すぐさま調査委員会に調査を委嘱し「事実の解明、要因、背景を含めて調査していただきたい。歴史に顧みれば有害行為というものの協定違反の重み、事実の徹底した解明の必要性がある」と求めた。

 調査の焦点は、選手本人が(1)八百長などの不正行為を行ったか(2)野球賭博を行ったかの究明となる。熊崎コミッショナーは「どちらに該当するかを基本的に考えている。事実関係はどちらかに該当することは間違いないと考えている」。調査期間は1カ月から1カ月半をメドとする見通しだ。

 該当期間、福田は2軍にいたこともあり、巨人側は八百長はなかったという認識を示している。ただ、もし福田が1軍昇格した場合、賭博で多額の借金を背負った状態で登板していた可能性もあり、八百長など新たな問題に発展する危険性は否定できない。

 また、反社会勢力との関わりにも調査が及ぶ。これも現状で、つながりがあるという報告はないが「野球界は(暴力団排除を)率先してやってきた歴史があるが、現実に起きたということを重視して、幅広い視野を持っていく。懸念は懸念として大事なこと。私も微力ながらいろいろなことに携わってきた経験がないわけではないので」とした。野球賭博を持ち掛けた人物が、野球賭博の常習者であるかも「はっきりさせる必要性がある」と話した。

 この日に行われた実行委員会では、各球団に徹底した再発防止を要請した。あってはならない不祥事の発覚。調査委員会からは処分案も提示される。「怠りがないように、厳正に対処しないといけない」と断固とした姿勢で臨むことを強調した。【佐竹実】

 ◆熊崎勝彦(くまざき・かつひこ)1942年(昭17)1月24日、岐阜県生まれ。72年検事任官。96年東京地検特捜部長。99年最高検察庁検事、04年同公安部長。同年9月の退官まで「落としの熊崎」の異名でリクルート事件、金丸信自民党副総裁(当時)の巨額脱税事件などに携わる。04年10月から弁護士として、07年関西テレビ「あるある大事典」番組捏造(ねつぞう)問題などを担当。05年からプロ野球のコンプライアンス(法令順守)担当のコミッショナー顧問として暴排問題などに取り組む。14年コミッショナー就任。

<野球協約第2章(コミッショナー)から抜粋>

 ◆第9条(指令、裁定及び裁決)の(1)指令 コミッショナーは、この組織全体の利益を確保するために、本項に基づき、関係団体等に対し指令を発することができる。(3)裁決及び制裁 コミッショナーは、関係団体等がこの協約に規定する制限又は禁止条項に違反した場合、調査委員会の調査結果に基づき、裁決し、制裁を科する。裁決によって科す制裁は、団体に関しては参加資格、保護地域、選手契約の保有、若しくは試合参加に関する諸権利の剥奪若しくは停止又は制裁金とし、個人に関しては永久若しくは期限つき失格処分、職務停止、野球活動停止、制裁金又は戒告処分とし、これらの制裁を併科することができる。