連続日本一に、ソフトバンクが熱く、スタートを切った。「SMBC日本シリーズ2015」が開幕し、パ・リーグ覇者のソフトバンクがヤクルトに快勝した。主砲内川聖一外野手(33)が肋骨(ろっこつ)骨折でシリーズ出場が絶望的となる中、5番松田宣浩内野手(32)が4回に先制ソロ。松田から6連打とたたみかけ3点を先制。先発全員の15安打で圧倒した。

 重苦しい雰囲気を打開したのは、熱男・松田の底力だった。0-0の4回だ。ヤクルト石川の外角シンカーをすくい上げた。舞い上がった打球は左中間スタンドに飛び込んだ。「先制点が大事だと思っていた。納得いくバッティングができた。最高の形のホームランになった」。3度目の日本シリーズで初めて描いたアーチは、大きな意味を持っていた。

 試合前にチームは軸を失った。主将で4番の内川が肋骨の骨折で日本シリーズの出場が絶望的になった。試合直前に選手が集まり、内川本人から経緯の説明を受けた。選手会長の立場でともにチームを引っ張ってきただけに、悔しい思いは痛いほど分かる。松田は内川のロッカーの前に立った。置いてあった手袋をつかみ、ズボンのポケットにしのばせた。「僕が骨折した時に、内川さんはポケットに入れて、プレーしてくれた。それがうれしかった。一番つらいのは、本人だから」。チームはさらに結束した。

 松田の先制弾で勢いに乗った。6番中村晃から連打が止まらず、6連打で3得点。「内川さんの思いを持って、みんなが1つになれた」。会心の表情で振り返った。

 CS3試合で9打数1安打と苦しんだ。開幕の2日前だ。他の選手が帰路に就く中、たった1人でスコアラー室にこもった。紅白戦など自らの打撃を何度も見返した。「CSは他のメンバーに勝たせてもらった。日本シリーズは…、という思いがあった」。研究は報われた。5回は右中間への二塁打を放ち、7回にはバッテリーのスキを突き、盗塁に成功。一躍、シリーズ男に浮上した。

 皆の結束に目を細めたのが、工藤監督だった。自身15度目の大舞台でも、監督としては初めて。初回から手に汗を握りっぱなしだった。「マッチのホームランがみんなを明るくしてくれた。彼(内川)の代わりに、勝ちたい気持ちがあったと思う。そういうことで1つになった」。ヒーローインタビューで、松田は叫んだ。「内川さん、見てましたか~!」。先発全員安打に武田の完投勝利。強くて、明るく、一致団結。2年連続の日本一へ、最高のスタートを切った。【田口真一郎】

 ▼ソフトバンクは先発全員の15安打。シリーズの先発全員安打は12年第5戦巨人以来11度目で、ソフトバンクは初めて。いきなり第1戦で先発全員安打は05年ロッテに次いで2度目だ。4回には松田の先制本塁打から6者連続安打。シリーズの1イニング連続打数安打記録は07年第3戦中日の7打数だが、途中に犠打を挟んだもの。四死球、犠打を挟まない6者連続安打は03年第2戦ダイエー、05年第2戦ロッテに次いで3度目のタイ記録。第1戦で6打数以上の連続安打は初めてだった。シリーズで松田のV打は日本一を決めた昨年第5戦に次いで3度目。「前年の最終戦から2試合連続V打」は06年第5戦、07年第1戦セギノール(日本ハム)に次いで2人目だ。