未完の大型左腕が現役に別れを告げる。広島篠田純平投手(30)が26日、球団から戦力外通告を宣告され引退を決意した。07年大学生・社会人ドラフト1巡目で入団し、10年には開幕ローテーション入り。だが、今季初めての1軍登板なしに終わっていた。戦力外通告を受け、ユニホームを脱ぐ決意を固めた。 見慣れないスーツ姿で8年間のプロ野球人生を振り返りながら、篠田は時折唇を震わせた。戦力外通告が言い渡された。

 「入団してから野球だけを全うしてきた。自分が出し切れる力は出し切ったと思う。すがすがしいというか、やりきった」

 マウンドではゴーグル姿が定着した左腕の瞳に涙はない。ここ数年、最後と思ってマウンドに上がってきた。左腕を振り続けた8年間に後悔はない。

 07年大学生・社会人ドラフトで広島から1巡目指名を受けて入団。愛知工大・長谷部康平(楽天)の外れ1位ながら、巨人、オリックスと競合。大型左腕として大きな期待を背負い、背番号14をもらった。しかし高い身体能力を生かし切れず、左肩の違和感などケガにも見舞われた。12年のオフには左膝内側半月板損傷のため手術。「何とかリハビリを乗り越えて、今年が最後と思って1年を乗り越えてきた。そこからマウンドに上がって勝つこともできた」。13年オフに背番号が21に変更。14年1月には梅津(楽天)に志願し、国学院大OB中心の合同自主トレに参加。2年ぶり勝利を含む3勝を挙げた。

 しかし、今季は2軍で15試合に登板し4勝6敗、防御率3・98。1軍は左投手が手薄な台所事情だったが、割って入ることができなかった。戦力外通告に、決意は固まった。「ドラフト1位で広島に入って、ご縁をいただいたこの場所で全うしたい」。導かれるようにやって来た広島の地で、ユニホームを脱ぐ。プロ野球人生に幕を下ろした。【前原淳】

 ◆篠田純平(しのだ・じゅんぺい)1985年(昭60)4月20日、神奈川県生まれ。前橋商-日大をへて、07年大学・社会人ドラフト1巡目で広島に入団。10年には先発と救援にフル回転し、自己最多の6勝。今季は1軍戦登板がなかった。187センチ、86キロ。左投げ左打ち。