ヤクルト真中満監督(44)が、日本シリーズ初勝利を挙げた。山田の3連発に勇気づけられ、早めの継投で勝利をたぐり寄せた。リーグ優勝を果たした、いつも通りの戦い方がようやくできた。福岡での2試合で、完敗を重ねたチームがファンの声援を受け、本拠地で復活した。95年から続く日本シリーズの神宮球場での連勝は8に伸びた。

 本拠地のファンの声援に、最高の形で応えられた。真中監督は、日本シリーズ初勝利で上がったお立ち台から、スタンドに手を振った。「ちょっと嫌な流れだったので、本当に今日の勝ちは大きい」。先発杉浦が粘り、リーグ優勝の原動力となったリリーフ陣につなぐ。シーズン中からやってきた野球をようやく披露することができた。

 福岡での2試合は、完膚なきまでにたたきのめされた。だが、ジタバタしなかった。羽田行きの飛行機に乗るための福岡空港で、DeNA中畑前監督に会った。「東京に帰って練習?」と聞かれたが、「休みです」と返事した。休んで大丈夫なのかと、中畑氏はポカンとした表情になった。だが移動日に全体練習をしないのは今季のチーム方針。「今までしてきてないのに、急に方針を変えてもしょうがない」と、あえて同様のやり方を貫いた。

 神宮では勝機があるとも感じていた。DH制の福岡での試合は、力のある先発を打ち崩さない限り、降板させられない。しかし、DH制がなくなり投手が打席に立つようになることで、代打と投手交代がカギになると踏んでいた。それは味方投手陣も同様。「早めに継投できるよう準備してほしい」と試合前から伝えてあった。

 状態のいい石山を勝負どころの6回から投入。勝ちパターンの継投への道筋をつくった。最大のピンチになりかけた7回1死一塁で柳田を迎えた場面では、左キラーの久古に託した。「(打たれたら)流れがいってしまう場面で、よく抑えてくれた」と感謝した。

 強敵から、ようやくの1勝だ。「まだまだ1つだけ。でも、勝たないと始まらない。すっきりしました」と言った。いつも通りの戦い方ができれば、どんな強敵相手でも勝機はある。いつも通りの準備をして、それを証明してみせた。【竹内智信】