ジャイアンツの「シンノスケ」は阿部だけじゃない。巨人からドラフト2位指名を受けた早大の「スピードスター」、1番重信慎之介外野手(4年=早実)が2安打1盗塁と活躍し、慶大を破り、2季連続優勝に王手をかけた。リーグ1位の打率4割2分4厘に上げ、初の首位打者に前進した。

 誰もが二塁ゴロだと思った打球に対し、重信はチャンスだと信じて走った。1回無死、フルカウントから食らい付く。セカンドベース寄りに飛んだ緩めの打球を、二塁手は正面で捕球。それが内野安打になった。

 「打った瞬間の判断。セカンドの守備位置を見て行けると思いました」と自信があった。50メートル走5秒7の俊足を生かす、重信の魅力が凝縮された1本。巨人柏田スカウトは「普通のセカンドゴロがセーフになる。ピッチャーはたまらないですね」と、“仲間”の一打に驚きを隠せなかった。

 泥くさくても塁に出る。2打席目はしぶとく四球で出塁すると、7回は151キロ直球を逆らわずに左前に運んだ。1分差に迫られていた首位打者争いは、2安打を放ち、打率4割2分4厘(2位は4割4厘=法大・畔上)に上げた。

 10月22日のドラフトで巨人から2位指名を受け、周囲の注目度は一変した。それでも「早慶戦に懸けていたので、特に気負いはないです」と平常心を保つ強心臓がある。かつてはパイロットを目指した持ち前の英語力で、「シャイな性格がフランクになりました」。小学校時代は学内選考でオランダ派遣を経験し、異文化に興味を抱いた。教育学部に通う今も、国際教養学部に1人で出向いて外国人の友人をつくる日々だ。

 「臆することなく、向かっていくタイプ」と自己分析。7回は、いつも通り7歩の大きなリードで二盗を決めた。現役1位の通算39盗塁。打って走って、グラウンドを駆け回って優勝に王手をかけた。「ユニホームが汚れていないと、仕事をした気がしないんです」。今や大人も仮装するハロウィーンの日に、こんな真っ黒なユニホームが格好良く映える。【前田祐輔】