あの怪物江川氏より速いのか。来秋ドラフトの超目玉、最速156キロ右腕の創価大(東京新大学1位)田中正義投手(3年=創価)が、151球を投げ、10奪三振完投で明治神宮大会(13日開幕)出場に王手をかけた。リーグ戦50回連続無失点を継続していたが、1回に公式戦51イニングぶりに失点。それでも最速152キロをマークし、関東学院大(神奈川大学2位)を破った。今日5日の準決勝で上武大(関甲新学生1位)と対戦する。

 “ミスター0”の田中にとっては、たった1失点がニュースになる。1回、先頭打者に三塁打を浴びると、無死三塁からギアを上げた。150キロ、150キロで連続三振、さらに死球で迎えた2死一、三塁。「真ん中にいってしまった」と、143キロを中前に運ばれた。今春から続けた公式戦の連続無失点が50イニングでストップ。マウンドで浮かべた苦い表情は、51イニングぶりというから驚きだ。

 それでも淡々と、後続を断った。「点は取られると思ってました。点を取られたことも粘れた要因」と切り替えた。最速は152キロで、1回は32球中、10球が150キロを超えた。中盤以降は直球狙いの相手に対してフォークを多投。目先を変えると、さらに終盤は90キロ台のカーブも織り交ぜた。相手を見ながら状況判断し、151球。2回以降は8個の「0」をスコアボードに刻んだ。

 今秋のリーグ戦は、46回を投げて防御率0・00。ヤクルト小川のリーグ記録(0・12)を4年ぶりに塗り替えた。ネット裏には8球団のスカウトが集結。怪物江川氏と高校時代から対戦した中日石井スカウトは「真っすぐは江川より速い」と言った。田中は高校まで外野手で、巨人のスカウト陣は、同じ経歴のレッドソックス上原と重ね合わせる。比較対象は、球界のレジェンドたちに広がっている。

 リーグ戦中から、週1回のウエートトレーニングを継続し、体重は約3キロ増の90キロをキープ。歯のかみ合わせを治すため、1カ月前から矯正を始めた。野球選手にとって、食いしばる歯は命。細部までこだわり、オンリーワンの直球を追い求める。【前田祐輔】