ポスティングシステムを利用した大リーグ挑戦を目指す広島前田健太投手(27)が24日、今オフ初めて球団との会談を行った。鈴木清明球団本部長とマツダスタジアムで約1時間話し合い、メジャー挑戦への思いを強く訴えた。前田は13年の契約更改時に球団に将来的な希望を伝えたが、昨オフはポスティングシステムによる移籍が容認されなかった。球団は慎重に検討を重ね、来週末にも方向性を出す考え。注目のエースの去就が一気に動き始めた。

 前田の去就問題が急展開した。シーズン終了後、「プレミア12」もあり、行われていなかった球団との話し合いが、急きょセッティングされた。約1時間、鈴木球団本部長にメジャー挑戦を訴え、球場から出てきた前田の表情は、すっきりしているようにも見えた。

 前田 毎年(大リーグへの)気持ちは強くなりますし、年齢も1歳ずつ年をとっていくので、できれば若いときに行きたいという思いはある。カープで何とか優勝もしたいという思いも…。いろんな思いがありながら、行きたいという気持ちは消えるというより、強くなる一方だった。後悔のないように行きたい気持ちは伝えたいと思っていた。

 海外FA権取得は早くて17年。13年オフの契約更改の席で初めて米大リーグ挑戦希望を球団に伝えてから2年がたつ。昨季は11勝も、大事なシーズン終盤に勝ち星を積み重ねることができなかった。無冠に終わった悔しさは一番感じていた。球団からも「機運」の高まりに欠けると判断された。「別に米国に行くためにいい成績を残そうと思っていたわけではないですが、ある程度の数字は残せたというのはある」。悲願の優勝はならなかったが、今季セ・リーグ最多の15勝。昨季とは異なる風が吹いている。

 この日、球団最多3度目のベストナイン受賞が決まった。今季は2度目の沢村賞も獲得した。だが、こう言う。「WBCだったり、いろんな国際大会を経験して、レベルの高さや自分の未熟さを痛感した。そういうところに自分の身を置いてみたいという気持ちになりました」。ポスティングによる大リーグ挑戦は、より高みを目指しているからこそだ。

 許可が出た場合に備え、準備も進めている。ダルビッシュ(レンジャーズ)や岩隈(マリナーズFA)らと同じ大手エージェント会社「ワッサーマン・メディア・グループ」に代理人を依頼。敏腕と言われるカッツ氏とウォルフ氏の2人が担当する。前田が投げた球を球団はどのように返すのか-。結論は早ければ来週末。球は投げられた。【前原淳】

 ◆ポスティングシステム 海外FA権を取得する前の選手が、MLB球団に移籍できる制度。12年に失効状態となり、13年12月に新制度を締結。日本球団が譲渡金(上限2000万ドル=約24億円)を設定し、その額を支払う意思があるすべての米球団が選手と30日間交渉できる。期間は11月1日から翌年2月1日まで。旧制度では譲渡金の上限がなく、交渉は最高入札額を示した1球団に限られた。現行制度での移籍例は田中(楽天→ヤンキース)のみ。今季はバーネット(ヤクルト)が11月に譲渡金50万ドル(約6000万円)で申請している。

<前田メジャー希望経緯>

 ◆13年オフ 12月10日の契約更改後、「来年(14年)に関しては契約しているカープのために頑張りたい。ただ(メジャーに)憧れがない、行きたくないといえばウソになる。憧れはあるし、行ってみたい気持ちもある」と表明。交渉の席でも、球団に近い将来のポスティングシステムでのメジャー挑戦希望を伝えていた。

 ◆14年オフ 契約の下交渉で、球団からポスティング制度を認めない旨を伝えられ、結局2000万円増の3億円(推定)で契約更改した。松田オーナーは「行かせてあげたい気持ちはあるが、ファンに後押しされる形で行ってほしい」と話し、鈴木本部長も「エースらしい働きをしてくれれば検討する」とコメントした。