浜松市を本拠にする社会人野球ヤマハにスピードスターが加わる。16日、東北福祉大の鈴木光外野手(4年=会津)ら、来季の新加入選手を発表。鈴木は50メートルを5秒7で走り、速さでは、ドラフト楽天1位のオコエ瑠偉(関東第一)にも勝る。優勝3回を含む都市対抗野球出場38度、日本選手権出場22度を誇る名門で走塁に磨きをかけ、2年後のプロ入りへの足掛かりにする。

 2年秋から4年春まで仙台6大学リーグ4季連続最多盗塁賞(盗塁王)を獲得し、プロも注目した鈴木がヤマハ入りする。今秋のリーグ戦は左太もも裏の肉離れが響き、5季連続盗塁王は逃したが、「2年後のプロ入りが第1目標。そこを目指している」と話した。

 50メートル5秒7。その速さは、今夏の甲子園を沸かせたオコエ(5秒96)に勝る。だが、今春のリーグ戦は2位で全国大学選手権出場を逃した。「全国に出て名前を売りたかったですね。打撃も思うようにいかず、ここでひと区切りと思って」。この時期からプロ入り前に社会人でステップアップする決意を固めた。

 8月上旬にヤマハの練習に参加した。東北福祉大OBの美甘将弘監督(41)も足の速さを知っていたが、鈴木は「どれだけアピールできるか」を意識し、チームの俊足、池田祥大(26)と30メートル走で競い先着した。同大の山路哲生総監督(49)がヤマハOBという縁もあった。

 福島屈指の進学校、会津時代は「50メートルは6秒0でした」と笑う。東北福祉大入学から、腹筋など体幹を鍛えることで0秒3タイムが縮まった。大学でこれほど速くなるのも珍しく、「走っている時に安定した力になった」と話す。左打ちでバントなどの小技もうまく、巧打で内野安打の出塁も多い。

 ヤマハの外野陣は層が厚い。「そこに、どう入っていくか」。あこがれでもあり、参考にしているのは同じ福島出身の足のスペシャリスト、巨人鈴木尚広だ。「代走で出てノーヒットで1点を取る。僕もそういうふうな走塁を」。社会人でもスピードスターになる決意だ。【久野朗】

 ◆鈴木光(すずき・ひかる)1993年(平5)4月8日、福島県会津美里町生まれ。高田中では軟式野球部と陸上部を掛け持ち。3年時の全国中学大会陸上100メートルで11秒0を記録し、4位入賞。会津高での最高成績は2年春の県大会8強。東北福祉大で優勝した14年秋に仙台6大学リーグ最優秀選手。170センチ、67キロ。右投げ左打ち。家族は祖父母、両親、兄2人。