愚直で律義な性格は、ユニホームを脱いでも変わらない。現役引退から約3カ月。木佐貫氏は、しっかり第2の人生へ向けた助走期間に充てていた。

 「朝方の生活に戻そうと思って、朝は5時起き。5時半からジョギングをしています。引退のあいさつ回りが一段落した11月から、パソコン教室にも行っているんですよ。エクセルやワードなど、これから必要になるかもしれませんからね」

 運動量低下から体の代謝が悪くなることを防ぐためのジョギング。社会人なら覚えておきたいパソコンスキル。コツコツと年明けから始まる新生活への備えを始めている。2016年1月1日付で巨人のスカウトとして再出発する。

 「また巨人軍でのスタート。右も左も分からないですが、13年前のルーキー時代を思い出して一から勉強したい。2度目のルーキーですからね」

 ファンを大切にした薩摩隼人は引退試合で胸を熱くした。9月30日ロッテ戦(札幌ドーム)。1イニングを3者凡退。有終の美を飾ったラスト登板の感傷に浸りながら、試合後の景色は現役生活最後の思い出の1ページとなった。

 「地元ファンからの温かい声援はもちろん、試合後に球場を1周してあいさつした時にライトスタンドのロッテファンも帰らずに残ってくれて木佐貫コールを送ってくれました。やっぱり、ファンあってのプロ野球だなと。本当にありがたいなと思いました」

 神対応とも呼ばれたファンサービスは、今後も継続するつもりだ。

 「もちろんですよ。引退した私に気づいてくれる方は、かなりコアな方だと思う。そういうコアな方がいたら濃い世界、渋い世界を共有して熱いトークをしたいですね」

【木下大輔】

 ◆木佐貫洋(きさぬき・ひろし)1980年(昭55)5月17日、鹿児島県生まれ。川内―亜大を経て02年ドラフト自由枠で巨人入団。03年10勝挙げ新人王獲得。10年にオリックス移籍。13年にトレードで日本ハム移籍。プロ通算215試合62勝72敗10セーブ、防御率3・76。186センチ、84キロ。右投げ右打ち。鉄道好きで有名。家族は夫人と2女。