虎の「超変革」イヤーが幕を開けた。就任1年目のシーズンを迎える阪神金本知憲監督(47)と、日刊スポーツ評論家の桧山進次郎氏(46)が熱く語り合った。03、05年に虎戦士としてリーグ優勝に導いた2人のトークは、虎への愛情にあふれていた。

 -桧山氏は、金本監督が就任要請を断るとみていた。

 桧山氏 ゴルフに夢中だし、もうちょっと外から野球を見たいのかなと。

 金本監督 最初はまったくね。冗談じゃないというか(笑い)。引き受けても、ちょっと(チームが)過渡期でしょう。

 桧山氏 何もかもが、落ちてきている時やから。でも、だから、引き受けられたのかも知れない。「超変革」という意味で。ただ、思い切っていくしかないけど、やっぱり勝ちたい。

 金本監督 もちろん、勝ちにいかないと。勝負度外視ってのはまず、あり得ない。ただ、レギュラー3つ(鳥谷、福留、ゴメス)しか決まっていないからしんどいんだけど。

 桧山氏 新外国人ヘイグの(映像)は見た?

 金本監督 忘れた…。

 (一同爆笑)

 金本監督 見たけどさ。時間もなかったし…。

 桧山氏 初年度で編成のことまでは難しいよね。

 金本監督 外国人と高橋(聡文)は取ったけど、他FA選手には手をつけなかった。

 桧山氏 意図は?

 金本監督 若手にチャンスをあげようと。FAで自分が来たくせに、FAに頼るまいというね(笑い)。それは選手には伝えましたよ。お前らを使いたいからと。若い外野手がギラギラしていましたよ。ニヤッとしていましたよ。

 -金本阪神の方針?

 金本監督 そうですね。チャンスを与える。お前ら(レギュラーを)取りにこいよとね。取れなかったら、使えないということだから。開幕スタメンにいなければ、準備不足だと。そこらへんは厳しくね。

 桧山氏 野手の核は、やっぱり鳥谷? 

 金本監督 鳥谷だね。本当に変わってもらわないとね。本人にも言っている。

 桧山氏 本当に変えるなら立場的に変えないといけない。4番を打たせるのも手なのかな、と。

 金本監督 ワハハハッ、鳥谷に、4番を? 

 桧山氏 タイプは全然違うけどね。

 金本監督 でも、意外に順応するかもね(笑い)。

 桧山氏 チームが負けてマスコミがたたくのは、チャンスで打てなかった4番鳥谷。そうなったら責任を負うようになるでしょう。あいつの野球も変わると思うけど…難しいかな? 

 金本監督 難しいね。大チャレンジだと思うけど、なきにしもあらず! 

 桧山氏 浜風もあるだろうし。ちょっと違うタイプの4番としてね。

 金本監督 面白いかもしれない。ちょっと頭に入れておくわ。

 -投手陣の手ごたえは

 金本監督 メッセンジャー、能見、福原の年齢がね(34、36、39)。年齢で野球やるわけじゃないけど、年齢で最後はやめるわけですから。もちろん期待している。でも、やっぱり不安。福原なんか「ああ、3連投なんか気を使わないと」ってね(笑い)。

 -そうなると藤浪にかかる期待は大きい

 金本監督 それは彼も分かっていると思う。どんどん完投して、中継ぎを休ませる役割を喜んで買って出てくれる。頼もしいですね。そういうハートを持っている子は。

 桧山氏 背負って立つ性格だもんね。

 金本監督 うん。だからああいう選手にはどんどん責任を押しつけてね。頼むよ。任せたよと(笑い)。

 -気持ちの重要性も説いている。

 金本監督 もちろんです。勉強だって100点を狙うのと、ただやるのでは違う。例えば大学のチームが巨人と試合したら、気持ちだけでは勝てない。でも、プロ野球の世界ですから。気持ちだけで上回る、実際に勝つ時は絶対にある。最後はそうですよ。

 -最後に金本監督への期待を

 桧山氏 僕は期待していますけど、期待しすぎないようにします。気持ち分かるし、育てないといけない部分もある。勝ってほしいけど、そこだけ見つめると、今までのタイガースと同じやから。若い選手を何とか育て上げてもらいたい。しんどいと思うけどね。腹も立つと思うけどね(笑い)。そこを我慢して、ここは突き放そうとか、そういう部分がでてくると思うけど、本当に大変だと思うなあ…。

 金本監督 ワハハハ! 目標はもちろん優勝に向かっていくしかないんで。厳しいと思いますよ。覚悟はしています。

 桧山氏 面白い野球はやってくれると思う。

 金本監督 選手が面白い野球できるように、こっちの教育に応えてくれないとね。【取材・構成=寺尾博和編集委員、鈴木忠平】

 ◆金本知憲(かねもと・ともあき)1968年(昭43)4月3日、広島県生まれ。広陵から1浪を経て東北福祉大。91年ドラフト4位で広島入団。03年から阪神へFA移籍。12年引退。通算打率2割8分5厘、2539安打、476本塁打、1521打点。連続1766試合出場は歴代2位。04年打点王、05年MVP。ベストナイン7度。現役時代は180センチ、88キロ。右投げ左打ち。

 ◆桧山進次郎(ひやま・しんじろう)1969年(昭44)7月1日、京都府生まれ。平安-東洋大を経て91年ドラフト4位で阪神入り。95年から外野のレギュラー。06年からは代打の切り札に。13年引退。通算打率2割6分、1263安打、159本塁打、707打点。代打で通算158安打はセ・リーグ2位。現役時代は177センチ、78キロ。右投げ左打ち。