【ピオリア(米アリゾナ州)28日(日本時間29日)=木下大輔】米国で早くも大谷狂騒曲が始まった。日本ハム大谷翔平投手(21)がチームのチャーター便で当地入りした。到着早々、宿舎では待ちかまえていた自称「新聞記者」からサインを求められるなど、初上陸の米国でも注目度はNO・1だった。現地時間2月1日から、将来的な挑戦希望を持つメジャー施設での春季キャンプがスタートする。

 広大な敷地に天然芝のグラウンドが9面ある充実のキャンプ施設に、大谷が目を輝かせた。球団と業務提携する米パドレスがマリナーズと共同使用する施設で「投打二刀流」4年目のスタートを切る。「まだ(練習を)やったわけじゃないので」と言葉は選んだが笑顔。約10時間のフライトの疲れを吹き飛ばすような整った環境に、気持ちは高ぶった。

 施設見学の前には、ハプニングに遭遇した。フェニックス国際空港からバス移動で宿舎へ到着すると、ヒゲを蓄えた米国人男性が近寄ってきた。「ヘイ、オータニ。サイン、プリーズ」。手にしたローリングス社製のメジャー公式球を差し出されたが、チェックインを急ぐため左手で制して、やんわりと拒否。しかし、男もあきらめない。次の瞬間、大谷の後を追って宿舎のロビーに突入だ。再びサインを懇願し、昨季の投手3冠右腕も根負け。ペンを走らせた。

 お宝をゲットしたのは自称「新聞記者」のマイケル・ラロッコ氏(27)。地元紙のピオリア・タイムズのライター兼スポーツ用具店でも仕事をしているというラロッコ氏は満面笑みで宿舎から出てきた。「やったぜ。日本ハムではオータニだけ知っている。YouTubeで動画がアップされているから、知ったんだ。他の選手と力が違うよね」。狙いを二刀流右腕に定めていた。サインボールに「もし、オークションで売ったら、今でも200~300ドルの価値が付くんじゃないかな」と、近い未来に付加価値がさらに高まることも予想するなど大興奮。その後も施設見学中の大谷を再直撃し、家族の手も借りて4個のサインボールを入手。勢いに乗って、他の選手にもサインをねだった。

 この日は施設見学のみだったが、到着早々に受けた思わぬ洗礼。大谷は「特に…」と、冷静に受け流したが、将来的なメジャー挑戦希望があり、春季キャンプ中に大リーグ関係者の視察が相次ぐことも確実視されている。キャンプインを前に、フライング気味にスタートを切った米国での大谷狂騒曲。「まだ、来て間もないので」と、控えめな言葉に終始した本人とは裏腹に、現地は一気に盛り上がりの気配を見せてきた。

 ◆大谷の今キャンプ目標 ピオリアでは、まずスケールアップした肉体と過去3年間で培ってきた技術的な感覚をすり合わせていく。今オフは体重を7~8キロ増量。一時は人生初の3桁となる101キロ程度にまで増やした。キャンプインまでに97キロ前後まで絞る見込みだが、肉体改造した新たなボディーについて、出発前には「別の体だと思って、扱っていかないといけない」と、変化を実感している。ハードとなる体の進化に伴って、ソフトである技術面をフィットさせていくことが課題の1つ。昨季の投手3冠(最多勝、最優秀防御率、最高勝率)を超える成績を残すため、充実した練習環境が整うメジャー施設でオフから取り組んできた試みの総仕上げをスタートさせる。