巨人阿部慎之助内野手(36)が29日、「捕手・阿部」を“始動”した。宮崎合同自主トレ2日目に、木の花ドームのブルペンで山口、高木勇、宮国のボールを受けた。試合で捕手を務めたのは、昨年6月6日のソフトバンク戦(東京ドーム)が最後。この日は立ち投げのみだったが、投球後にはアドバイスも送った。起用法について、高橋監督と春季キャンプ中にも話し合われる予定だが、準備は着々と進める。

 阿部が捕手に戻る日が見えてきた。投球練習開始を確認すると、内野の守備練習を途中で切り上げ、ブルペンに向かった。投げ込む山口に近寄り「おい、山口。受けてもいいか?」と約7カ月ぶりキャッチャーミットを構えた。受けるだけでは、気持ちを抑えられなかった。「上半身の力を抜いて、下半身をもっと意識しろ」とすぐさまアドバイスを送った。

 自然と体も動いた。山口が終われば高木勇、宮国の若手の球も受けた。「(捕手をやって)悪いですか? 暇だからやった」と本音は明かさなかったが、捕手としての本能が体を向かわせた。計75球。菅野、今村、田口、戸根の元へも足を運び、感じたことや今後の課題点を1人1人、丁寧に伝えた。懐かしい光景だった。

 捕手としての染みついた行動は、何一つ変わっていなかった。昨季から一塁手へ転向。それでも、捕手目線は持ち続けた。昨年の9月のDeNA戦の試合前。横浜スタジアムの食堂で、右打者のバルディリス(現韓国・サムスン)の攻略法を話し合った時だった。ノートに打者の絵を描くと、野手目線ではなく捕手目線で配球を書き込んだ。投手側から見れば、右打者なら右側に書くが、阿部は左に書き込んだ。「自然と書いちゃったよ。今までこうやって書いてきたからね」と“癖”は抜けていなかった。

 1度離れかけても、体に染みついた感覚、動きを忘れることはなかった。だからこそ、7カ月間、捕手から離れていても、自然とボールがミットに収まった。山口は「良いアドバイスをもらいました。すごく実績のあるベテランの方なので、安心して投げられます」と感謝した。今季の捕手・阿部としての起用法は未定だが、可能性は十分に高まってきた。【細江純平】