巨人の両雄が指導者として並び立った。1日、宮崎春季キャンプが始まり、高橋由伸新監督(40)と臨時コーチを務めるOBの松井秀喜氏(41)が共闘態勢に入った。「静」の姿勢で全軍の把握に努めた指揮官に対し、ゴジラ先生は「動」の姿勢で坂本、片岡らを精力的に指導した。2つの巨星が強い巨人軍を創造するために動きだした。

 同じ視線で打撃ケージの中の選手を見守った。岡本、大田ら未来を担う素材から始まったフリー打撃。巨人の勝利のために計653本のアーチをかけた高橋監督と松井臨時コーチが並ぶ。指導者としての道をともに歩む日がついに訪れた。

 互いに言葉を重ね合った。高橋監督が「目の前で打っている選手について話したり、昔話」と言えば松井コーチも「お互い年を取ったなと。思い出はたくさんある」と同調した。ノスタルジーな思いも混じった。

 指揮官は静かに観察を続けた。ブルペンでは内海、宮国、ルーキー桜井らの投球を正面から見つめた。「(桜井は打席で)近くで見ようと思ったけどペースを狂わせても」と自らの新人時代を思い起こし、配慮した。打撃でも直接指導しなかった。気がつけば昼食も取らず「見ることがいっぱい」と時間が流れた。

 対してゴジラ先生は助言を送り続けた。1軍のノック中に2軍に移動し、石川出身で同郷の北を今キャンプ最初の“門下生”として指導した。1軍では坂本、片岡と中核の選手も実演しながら教えた。坂本は「どんなイメージを持ってやっているか聞いた。良いことが聞けた」と収穫を感じ、片岡も「(スイング時に)右足にしっかり乗せて左足を柔らかく(地面に)つけば、ボールが長く見られる。松井さんはスーパースター。真摯(しんし)に受け止めたい」と糧とした。

 松井コーチは誠意を尽くすと明言した。「私はチームのサポート。個々のレベルアップの力になれれば。ひいてはチームの力になり、監督の力になってくれたらうれしい」。黒子として有形無形の力を与える。

 かつて強い巨人をつくった2つの星が1つになった。高橋監督は青島神社に奉納した絵馬に「一新」と記した。「チームの所信と同じ。新しくという意味もあるけど、心を1つにという思いもある」。両雄が一心で巨人に革命を起こす。【広重竜太郎】