阪神金本知憲監督(47)が3年目の横田慎太郎外野手(20)に熱血指導を施した。春季宜野座キャンプ2日目。自らティー打撃でお手本のスイングを示すと、横田のフォームも動画撮影するなど、マンツーマンで30分以上も打撃修正に乗り出した。近い将来の大砲候補と期待する表れで、「迷ってパニクれ」とも指令。掛布2軍監督の秘蔵っ子でもある左の長距離砲を、1軍監督も「超変革」の育成に乗り出す。

 芯を食う打球が続かない。見かねた金本監督は横田からバットを奪うと、おもむろに左打席で構えた。フォームは現役時代そのまま。直立不動の20歳の若虎に、手本のティー打撃を3球打って見せた。初日は江越に模範の構えを示し、2日目は就任以来初の実演披露。1軍キャンプに抜てきしたが、苦しんで映る大砲候補に30分超の熱血マンツーマン指導を施した。

 金本監督 テークバックからステップの間に問題がある。割れがなく、弓を引く感じが出ていない。今は振ったところにボールが来ないと打てない。ワンポイントしかない。試合では打てるところに投げてくれませんよ。

 構えて打ちにいくまでに十分なタメがないから速球に押され、変化球に泳がされる。当たれば飛ぶが、この日のフリー打撃75スイングで柵越えは11本。当たり損ねも目立つなど確実性が低い。その後の特打でも186振で柵越えは22本止まり。現実を浜中打撃コーチにiPad(アイパッド)で動画撮影させるとその場で再生ボタンを押し、横田にも見せた。

 金本監督 軸回転は秋よりできているから、そこさえ直せばね。ちょっとしたきっかけで覚醒することもある。迷ってる部分もあるだろうし、迷路に入ってパニクるのもOK。でもそこから生還したら自分のモノになる。パニクって欲しいね。誰もが通る道だから。

 パニクれ、大いに悩め。その先に光が見える。鬼指令は近い将来4番を張る男と期待する裏返しだ。昨秋2軍の鳴尾浜キャンプで初めて打撃を見た時、「3年かかって3割10本(塁打)にするより5、6年かけて3割40本。そういうつもりで育てる」と誓った。球団80年の歴史でも日本人の40発打者は藤村、田淵、掛布、金本の4人だけ。育成は簡単な道のりではないが、新指揮官は覚悟を決めた。

 金本監督 10言って1つでもハマれば。彼は時間がかかるかも知れない。長い目で大きな心で接していく。指導者には根気がいる。

 掛布2軍監督も手塩にかける秘蔵っ子。すぐに結果は出ないかもしれない。ただオリックス糸井やソフトバンク柳田のように大化けする可能性は十分に秘め、その爆発力は想像を絶する。十数年に1人の素材を必ず開花させる。横田育成へ、金本5カ年計画が本格スタートした。【松井清員】