阪神金本知憲監督(47)が4日、鳥谷敬内野手(34)に20発打法を伝授した。春季宜野座キャンプ4日目。フリー打撃後に歩み寄ると、ノックバットを手に、バットの出し方をアドバイスした。「20本塁打は打ってほしいし、目指させる」と望む1発量産型へ。初の直接指導で思いを伝えた。

 金本監督がフリー打撃を終えた鳥谷に歩み寄った。手にしていたノックバットで手本の構えをつくると、おもむろに打撃指導を始めた。何度も手本を示したのはバットの出し方だ。そこには、真剣な表情で聞き入る背番号1の姿があった。

 金本監督 練習方法としてやってみたらと。スピンをかけるのとはちょっと違います。特殊な方法なんだけどね。彼の能力、体の強さ、筋力の強さを考えた時、バットからボールに力を伝えられるきっかけをね。

 ここ5年間の最多アーチは13年の10本。その力量からして物足りない数字だ。原因の1つがバットの出し方にあると見ていた。左手の始動が若干早いため、右肩が開いて打球に力が伝わらないことがある。その改善法として、左肘を左胸付近にぶつけるイメージで振る。これなら右肩も開かずヘッドも走り、軸回転で打ち返すことができる。伝授したのは、自身の現役時代に体現したアニキ独自の本塁打量産打法とみられる。

 ここ数年、阪神監督が実績のある鳥谷を教えるシーンはなかったといっていい。だが、金本監督に聖域はない。就任間もなく「一番変わらないといけないのは鳥谷」と遠慮なく名指し。「20本塁打は打ってほしいし、2番を打っても目指させる」と1発型への変身指令も出した。そのための手助けがこの日の初の直接指導。3分ほどでも、師弟タッグ誕生を感じずにはいられないシーンとなった。

 鳥谷も「次の特打の時に、こうやった方が良いという話でした」と感謝した。鳥谷にとっては、入団3年目の記憶が呼び覚まされた瞬間だったかもしれない。06年12月の明け方のバーでのこと。宴には藤本敦士(現阪神2軍守備走塁コーチ)も同席していた。全員同じ右投げ左打ち。左肘を左胸にぶつけるように…。利き腕の使い方など共通の課題があり、現役のアニキは熱弁を振るった。まだ若かった当時は難しくても、今の鳥谷なら習得できると背中を押したに違いない。

 片岡打撃コーチは「左がちょっと早く出ていく癖がある。ヘッドを利かせるとか、そういうところを監督も見ているんじゃないか」と補足した。マスターすれば20発どころか、大量生産も期待できる。厚い信頼関係で、アーチストへの変ぼうを実現させる。【松井清員】

<金本監督が語った鳥谷への期待>

 ◆主将 昨年10月31日に行われたテレビ番組で鳥谷のキャプテンについて問われ「継続させます」と明言。

 ◆定位置 11月24日の納会で、16年のレギュラーについて「鳥谷、福留、ゴメス以外のポジションは空いている」と公言した。

 ◆二刀流 テレビ生出演した11月25日、能力と昨季成績を比較し「3番で見たとき6本塁打というのはね。1番と考えたら、盗塁も倍(昨季9個)はしてほしい」と2パターンの要望。

 ◆2番&20発 今年1月27日、テレビ出演し鳥谷の打順を問われ「2番が面白い。攻撃的な選手を置きたい」。仮に2番になっても、本塁打は「20本を目指させます」と言い切った。