成功の3カ条は「のむ、投げる、走る!?」。広島の宮崎・日南キャンプに6日、安仁屋宗八臨時コーチ(71)が合流した。早速ウオーミングアップ前に選手から笑いを取ると、ブルペンではアドバイスと褒め言葉で投手の投げ込む意欲を刺激。野村祐輔投手(26)が今キャンプ投手陣最多の131球を投じるなど、安仁屋効果が全開だった。

 広島キャンプの雰囲気が変わった。前日が休日だったからではない。白ひげを蓄えたユニホーム姿の安仁屋臨時コーチが合流した。ウオーミングアップ前の円陣では「投げ込み、走り込み」に続き「(酒を)飲め」という珍指令で笑いをとり、つかみはOK。ブルペンでは積極的に選手に声をかけた。

 安仁屋 今、投げ込まないでいつ投げる。完投しようと思ったら130~150球は投げる。今やらずしてシーズンではできない。

 安仁屋効果か、野村が今キャンプ投手陣最多となる131球を投げ込み“完投”した。仕上がりの良さが目立つ右腕は100球超の投げ込みに「体に染み込ませたい」と話す。後ろで見守り、アドバイスと褒め言葉で選手を乗せる臨時コーチの存在は「チームの外側から違う見方をされている。中にいると見えないことを教えてもらえるかもしれない。ありがたい」と感謝した。

 臨時コーチとして25日までチームに同行する。緒方監督は「選手に声をかけると選手の表情がゆるむ。雰囲気を明るくしてくれる」と好影響を喜んだ。チーム内の雰囲気を変える存在だけでなく、投げ込みや走り込みの重要性を若い選手たちに伝えていくつもりだ。

 安仁屋臨時コーチも入団当初は投げ込みの重要性を知らなかった。春季キャンプ中に当時の根本陸夫監督から言われた。「俺がよしと言うまで投げ続けろ」。理由が分からなかった。100球を超え、200球を超え、球数は覚えていない。そのときだ。力が抜けて自分でも驚くほどきれのある球が捕手のミットに収まった。監督の「よし」の言葉。投げ込みの重要性が身に染みた。

 円陣では笑いだけでなく、チームの士気も高めた。「もっと底力を出して、緒方監督を胴上げしよう!」。疲労が色濃くなる時期に、広島の重鎮が新しい風を吹き込んでいる。【前原淳】

 ◆安仁屋宗八(あにや・そうはち)1944年(昭19)8月17日生まれ。沖縄県出身。沖縄-琉球煙草から64年に広島入団。阪神に移籍した75年に最優秀防御率(1・91)に輝く。80年から広島へ戻り、81年までの実働18年で通算119勝124敗22セーブ。引退後は広島で投手コーチ、2軍監督などを務めた。右投げ、右打ち。