ヤクルトの今季スローガンは「燕進化」だが、成瀬善久投手(30)は「猫進化」で、開幕ローテーションを勝ち取る。8日、フリー打撃でバレンティンと山田を相手に42球を投げ、23スイングで安打性6本に抑えた。昨秋から習得中のワンシームは、2人から見逃しストライクを取るなど新兵器になりそう。14日、浦添で行われる韓国・KIAとの練習試合に先発し試す予定だ。

 成瀬の闘争本能に火が付いた。山田にいきなり初球から2球続けて長打性の痛打を浴びたからだ。「初球パーンと打たれたからね。いい緊張の中で投げられた」と、3球目から本気モードに入った。外角を中心に直球、チェンジアップ、カーブ、スライダーを決めていく。20球目の外角低めの見逃しストライクが新球だった。左腕は「うん。謎のボールね」と報道陣をけむに巻いた。

 山田が証言する。「ああ、ツーシームしてました。斜めにピッと。いいボールでした」と脱帽した。やはり19球目の新球を見逃し、ストライクと判定されたバレンティンも追従した。「ツーシームだろ。僕はボールとジャッジした。つまりグッドピッチ。よく動いていた」。

 正体はワンシームだ。みんなが間違うのも無理はない。捕手の中村が「ツーシームと同じような感じです」と説明した。直球とほぼ同じ軌道と速度ながら、打者の手元で利き腕方向に少し沈む。右打者からは遠くへ、左打者には食い込む。

 ネット裏では中日の善村スコアラーが驚いていた。「アレッと思って持ち球を確認しました。ないボール。シュートかツーシームですね。使えますよ。見といて良かった」とうなった。

 成瀬は昨年、わずか3勝に終わった。移籍2年目は結果が必要だ。進化を求めて昨秋から取り組み始めた。ひとつの縫い目に人さし指と中指で挟むように握るのが一般的で、直球のように投げる。「今年は順調に来ている。腕も振れているが、もっと上を目指さないといけない」。招き猫投法がレベルアップして生まれ変わる。【矢後洋一】